「戦雲がまた湧き出てくるよ 恐ろしくて眠れない
権力者たちは何を見ているのか」
振替休日のきのう、ポレポレ東中野で
三上智恵監督の最新作「戦雲(いくさふむ)」を見た。
本編が始まってすぐに語りをつとめる
山里節子さんがカッコ内の思いをウチナーグチで歌う。
祖先から受け継がれた歌だ。
そのふもとに構えるのは於茂登岳。
ここにミサイル基地が作られたが
まだその前の映像。
ここに出来ることは自らの心臓をえぐり取られるくらい
苦しいと山里さん。
そこに住む島人(しまんちゅ)に
新たな不満と不安をもたらし
対立や分断をもたらす。
しかしこの映画が伝えるのはそれだけではない。
与那国島のおじい、カジキ漁師の川田一正さん。
戦前生まれの80代で若い時に親と離れて苦労をしたが
与那国に来て家族が出来て幸せと掴む。
川田のおじいは自衛隊が来ることに反対はしていない。
人口が増えて島が豊かになれば良い。
しかし現実は自衛隊ばかりが拡大して
地場の産業は良くなっていない。
国民保護法による避難計画でも
積極的に質問や意見を出している。
若者たちが活発に行動したが議会は否決。
残されたのは沖縄戦を体験したおじいとおばあだけになった。
その一方で宮古島では
楚南由香子さんと娘の明香里さん、さらに
下地茜さんとその両親(博盛さんと薫さん)と
世代を超えた「抵抗」があった。
国は自分たちがいずれ反対することに
あきらめることを待っているが
ほんとうに諦めたらここでは生きていくことができない。
だから声を出し続ける。
本島ではうるま市に離島の駐屯地を管轄する
陸上自衛隊のミサイル基地統括本部がある。
あそこから予告なしに銃弾を利用する訓練があった。
近所にまで聞こえるのに
説明をする防衛省側は騒音に影響はないとウソをつく。
しかし拡声器からの抵抗の声に
突然訓練が休憩になる。
本当に自衛隊は島民を守れるのか。
最後に出てくるのは与那国島の久良部ハーリー。
川田のおじいが応援する南組(他に北組・中組がある)にも
自衛隊の人が練習をして参加している。
みんながひとつになって応援し
総合では中組に取られたが第三戦で勝利してみんなで喜ぶ。
でも自衛隊は転勤があるのでずっとハーリーには参加できない。
「自衛隊があろうとなかろうと戦争は起きるときは起きる。」
川田のおじいの言葉。
足をカジキの角で刺されても船を降りずに
再び漁へ。そして大物を釣った。
それがラストシーンに。
この島にとって最大の脅威は何なのか。
もっとヤマトンチュ(本土の人間)は
考え直すことが必要だ。
私は見終えてそう感じた。