「戦後日本は国内外に多大な犠牲を強いた戦争への反省から、
その後、日米安全保障条約で米軍の日本駐留を認め、
他国に軍事的脅威を与えない『平和国家』の道を変わらず歩んできた。
攻撃を受けたときに初めて防衛力を用いる専守防衛、
他国領域を直接攻撃する敵基地攻撃能力の不保持、
国際紛争を助長しないため武器を輸出しない武器禁輸原則、
節度ある防衛力整備などである。
これら平和国家の礎を成す防衛政策は
(第2次)安倍晋三政権が2015年9月19日に成立を強行し、
翌16年3月29日に施行した安保(関連)法以降、
次々と転換された。
もはや、かつて国際社会から高い評価と尊敬を勝ち得たとする
平和国家の姿はそこにはない。
起点は安保法成立強行1年前の14年7月1日、
自国が直接攻撃されていないにもかかわらず
自国と密接な関係にある外国への攻撃を実力で阻止する
集団的自衛権の行使を巡り、
歴代内閣は『憲法9条のもとで許される実力の行使を超え、許されない』
との解釈を堅持してきた。
『集団的自衛権の合憲性は砂川判決で担保されている』として
強引な解釈変更に踏み切った。
固有の『自衛権』を持つと明示してはいるが、
個別的自衛権を指すことは明白であり、
そもそも集団的自衛権を巡って争われたものではない。
この判決から集団的自衛権の行使容認を導き出すのは、
自分に都合よく無理に理屈をこじつける牽強(けんきょう)付会が過ぎる。
安倍元首相自身も「離れ業の論理を構築」
とても適切な手法とは言えまい。
その閣議決定を根拠とする安保法はそもそも正当性を欠く。」
長い引用になって恐縮だが、きのうの東京新聞の社説の一部である。
書いてあることはすべて正論だが、
いまでは世間的に関心を呼ぶことは少なくなった。
これまでに安保関連法は違憲であることについて
国を相手取っての民事訴訟が行われたが(25件!)
唯一憲法9条に基づく判断を示した
「明確に違反するとまではいえない」として
原告(福島県の住民など150人)の訴えを退けた。
その他の訴訟では憲法判断も示さず「門前払い」をして
三権分立に反してまでも、国家ぐるみで「合憲」へと仕向け、
怒りと反対の声を封じ込めていた。
しかしこれが下火になったと思ったら大間違い。
岸田内閣はウクライナ情勢や台湾有事をダシにして
経済安全保障推進法の成立・施行と
防衛装備移転三原則の見直しによる武器輸出の規制緩和、
さらに経済安保情報保護法案と
武器購入に関する長期契約恒久化法案(まだ衆議院を通過しただけだが)と
次々と「戦争への準備」をするための準備をしているかのようなことを
やっていることに市民の怒りが爆発した。
防衛費の増額にも反対する訴えもあった。
それだけではない。
武器取引反対ネットワーク「NAJAT」は
岸田政権与党の公明党に対して
第三国への輸出を認めたことについての直接行動を開始した。
25日に行われた
「公明党に次期戦闘機第三国輸出についての真摯な説明を求める会」。
公明党側は議員も秘書も職員も誰一人現れず
参加者(13人)はそのあとに山口那津男代表の国会事務所を訪れましたが、
秘書は「まったく聴く耳を持たず、開き直るばかり。」
要請書の受け取りも拒否。
朝には「戦闘機輸出閣議決定反対!勝手に決めるな!首相官邸前緊急行動」
で抗議行動も行われた。
直接防衛関係企業への抗議行動も活発化している。
ガザをめぐってイスラエルへの武器輸出を行う動きが
あったからだ。
安保関連法への怒りや反対は
形を変えて続いている。
それが岸田政権へのダメージにつながっていることを
もっとマスコミは報じるべきなのだ。