性同一性障害とトイレ利用で考えること

昨年の話になるが、

2020年も大きな問題になるかもしれないので

書いておきたい。

戸籍上は男性だが性同一性障害

女性として生活している

経産省職員(50代)が

庁舎内の女性トイレの利用を制限しないように

求めた訴訟で12月12日に

東京地裁はその制限をすることは

違法であるとして国に慰謝料など

132万円の支払いを命じる判決を下した。

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(13日の東京新聞朝刊社会面より)

この職員は専門医から性同一性障害であると診断され

女性らしい服装や化粧で勤務をはじめたのは2010年のこと。

健康上の理由で性別適合手術を受けておらず

いままで霞が関の庁舎内フロアと上下一階ずつの女性トイレの使用が

認められていなかった。

本人は説明会で同僚に理解をしてもらっただけでなく

家裁に申し立てて名前も変更している。

のにもかかわらず裁判では国側は

手術を受けていないことを根拠に、

他の女性職員とトラブルになる恐れが

あると制限の合理性(というより正当性)

を訴えたが

判決では

「自認する性別に即した社会生活を送ることは

 重要な法的利益で、制約は正当化できない」

として、トラブル面についても

トイレを使う他の女性職員への配慮は必要だが、

原告職員が性的な危害を加える可能性は

客観的に低い状態であるとして

「意思に反して体を傷つけられない自由を

 制約する面がある

(=手術を受けなくても女性として認めなければいけない)」

被告側の主張を全面的に退けた。

今回の判決は性的少数者

職場環境の改善を求めた訴訟で

初めて原告側勝訴となったもので

「民間企業では20年近く前から

 自分らしく勤務している。

 ようやく判決で認められた」

と原告職員は記者会見で振り返ったが、

国が中心になってLGBTやダイバーシティに関する

さまざまな取り組みをしているのにも

かかわらず、肝心の官公庁が

それらの理解に対して後ろ向きな

対応しかやってきていないことには

驚いてしまうし、

このような裁判のニュースが

伝えられないと

このような実態が明らかにならないとは

ちょっとおかしいのではないかと思う。

原告職員は当時、上司から

面談で「もう、男にもどったらどうか」と

言われたそうだ(当然これも違法と断罪)。

大切なのは性同一性障害と診断されたことと

それによって性別を変えて勤務するという

事実を受け止めることが重要なのに

これを認めないのは

「もうここで仕事が出来ない」と同じことになる。

違和感を覚える人もいると思うが

まず本人の心に本当に寄り添うことが

大事なのである。

自分の職場からそういう人が出てくるかどうかは

わからないとしても

そういう場合があることを

常にイメージしてもいいかもしれない。

そうしなければいつまでも

差別や無理解ばかりがはびこることに

なりかねない。

どだい自分が女性だと心から認めているのなら

他の女性職員を「異性」として意識することは

よほどの例外でない限り起こりうることは

ないはずなのだから。

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