「学術会議任命拒否」新聞のインタビュー記事に騙されない方法

新聞の違いは「社説」と論説記事の違いだというが

一面から社会面までじっくりと読んでみると

その主張と裏付けとなる根拠において

切り口や「料理法」の違いに気づくことが多い。

さらにこれがフェイクニュースにつながる

危険性をはらんでいる例も見かけることがある。

f:id:shiraike:20210117152431j:plain

16日の読売新聞朝刊4面の新年展望インタビュー「語る」では

日本工学会副会長の小松利光氏(72歳)に

学術会議問題から防衛研究の今後に関する意見を聞いている。

見出しだけでも

「安保研究 学者の良識で」

「防衛装備品 自国生産強化を」

「戦前の幻影」

「ディアルユース」「偏りない組織に」

が目立つ。

これだけでも、学術会議の任命拒否問題よりも

防衛研究に全ての学界が積極的に協力することが

国益にかなう道であるという記事だということが

はっきりわかるし、熟読すれば

いかにもという理由が明らかになっている。

しかしこれを鵜呑みにすることでは

学術会議の任命拒否問題の解決には至らないことも

よくわかるのだ。

 

小松氏は災害と防衛工学の専門家で

2017年(平成29年)の学術会議による

「軍事的安全保障研究に関する声明」(以下・声明)に反対したことから

読売新聞のお眼鏡にかなったといえる。

だが、まず「防衛装備品の国産生産強化」は

「海外の高い輸入品に頼れば、税金の無駄遣いになりますし、」

だからこれを推進すべきだとしているが

だったら「オスプレイ」や「イージスアショア」や

「F-15戦闘機」は何なんのかと言いたい。

「武器」は「防衛装備品」じゃないからという

言い訳は通らない。

アメリカはバイデン政権になっても

自国生産の「防衛装備品」を日本に爆買いさせる方針は

止めないはずだ。批判するならこのやり方を否定すべきだが、

これを「自衛のための研究」を含むのかということに関して

声明をつくる時に他のメンバーからそっぽを向かれたからと

学術会議に矛先を向けたのだ。

アメリカの戦争に協力し、そのために他国の兵器を買わされるのは

決して自衛の強化とは違うし

いまの菅政権が本気でそう考えるわけがない。

 

また、「ディアルユース」にしても

同紙が元旦一面で取り上げたように

研究費その他の環境が

自国よりも中国のほうがいいからと

「千人計画」に吸い込まれていく

事実を無視している。

いまの日本は民間および公費による

研究費の助成よりも

防衛予算による学術研究の推進が

幅を利かせるようになった。

「また近年、民生研究と軍事技術は

 区別がつかないようになっています」と

本人は語っているが

今後は日本において、

防衛予算による支援は軍事研究に直結し

インターネットのように最初は米軍が開発したのが

民間に広く拡大されるような可能性がなくなるかもしれない。

ピント外れもいいところである。

 

小松氏はインタビューの最後に

日本全国の85万人いる科学者の声を

偏りなく会員210万人を選ぶ方式にすべきだとしているが、

今のところ自民党が示した改革のスキームでも

「政府から独立した組織にすべきだ」という意見はあったが

会員をすべての科学者による互選で決めるべきだという

話は一つもなかった。

それどころか政府はこのスキームから

どんな法改正案を出してくるかわからないので

梶田隆章会長ら幹部としても

反論のしようがない状態であることは

小松氏もわかっているはずだ。

まさにこれはいまの学術会議の破壊をもくろむ

プロパガンダ」そのものだと思う。

こんな記事を真に受けることは

いまの政府に騙されて

憲法でも保障されている

「学問の自由」が破壊されるということだ。

まちがいない。

 

最後に、任命拒否された6人の学者(候補)は

法学・政治学の研究者で理工系は一人もいない。

声明に反対した学者はこの分野にもいたはずだ。

まさか「だれも学術会議のメンバーにはいませんでした。」

それは嘘だろう。

本当なら同じ分野の学者に任命拒否問題を聞くことが

社会の木鐸である新聞の仕事だ。

小松氏は自身の見解を言ったから悪くはない。

しかし、それに便乗して

新聞は決して悪い仕事をしてはいけない。

 

ちなみに学術会議は

6人の再任命について声明を出したが

加藤官房長官はきのうの記者会見で

「任命権者として最終判断をしたものであり、一連の手続きは終了している」

と全て終わったことにしたが

この日の新聞は声明のことは

小さな記事程度にとどめて

「いまはそんなことをやってる場合じゃないだろう!

 それよりコロナだコロナだ!」と

煽っている感じがする。

マスメディアはすっかり菅政権に

右へ左へとコントロールされまくりで

どうしようもありませんね。

 

日本学術会議任命拒否問題 安倍・菅政権が繰り返す、違憲・違法の制度破壊!「任命拒否」を受けた当事者がズバリ語る!! 岩上安身によるインタビュー 第1026回ゲスト 早稲田大学大学院法務研究科教授・岡田正則氏 | IWJ Independent Web Journal

イタリア学会の声明 - ペンは剣よりも強く (hatenablog.com)

除外した6人「4月までに任命を」 学術会議が声明:朝日新聞デジタル (asahi.com)