「当時はとにかく拳銃を挙げろ。手段を問わない。
必要であれば買ってでもいいから。」
「隠匿場所を知っているS(スパイ)を獲得するのが
常套手段だった。」
「Sが機関銃を持ってきて、コインロッカーに入れたって連絡してきた。
その番号が893番、ヤクザですよ。はっきりいって
拳銃摘発の9割はほぼヤラセです。」
2日深夜に日テレで放送されたNNNドキュメントは
北海道警の元警部、稲葉圭昭氏の告白で番組がつくられた。
稲葉氏は映画「日本で一番悪い奴ら」の原作本の著者であるが、
いまは札幌市内の市場で総菜の製造販売を営んでいる。
「よしあきのだし巻き玉子」1切れ120円、2切れ220円。
日の出前からたくさんの玉子を焼き、サンドイッチも自分で
仕上げをこなす。今年で65歳になる。
その人物がかって拳銃対策課のエースとして、
多くの銃を摘発して北海道警(道警)を全国1位に導いたことを
知るものは少なくなっている。
その稲葉氏が覚せい剤と拳銃所持で逮捕されたのは2002年7月。
覚せい剤密売にも関わっていたことも発覚して
現職警官の薬物スキャンダルとして世間を騒がせたが、
実は、拳銃を摘発する捜査を続けていくうちに
「人としてやっちゃいけないことをやっちまったんだから」。
つまり悪いのは稲葉氏だけではなく、
道警が拳銃摘発のために覚せい剤密輸を
許してしまうという組織ぐるみの犯罪を隠蔽するために
稲葉氏が切り捨てられたというのだ。
前述のSは暴力団関係者でその関係を保つために
飲食などで多額の金が必要となり、自腹で出来なくなると
覚せい剤密売に手を貸すことになり、
自身も所持や使用までするようになった。
その密輸で多額の金を手にすると
生活面での羽振りが良くなっていったが
道警側は見てみぬふりをするばかり。
自ら暴力団員になりすまし、300万円で拳銃を買ったこともある。
「自分の(柔道でつぶれた)耳を見て、おまえサツだろうと言われて
拳銃を突き付けられて怖い思いをして、ションベンちびりそうになった。」
300万円は?「税金です。税金が暴力団に流れた。」
2000年、石狩港からの覚せい剤130㎏と2tの大麻の密輸を
見逃す代わりに拳銃200丁を押収させることが出来るとSから情報が入り、
稲葉氏の上司が税関の根回しをして4月に覚せい剤の密輸は果たされるも
Sが飛んで(失踪)、その密売仲間が「出し抜かれた」と稲葉氏に迫り
結局大麻2tの密輸にてを貸して、その引き換えに税関に別のSに出頭させて
20丁の拳銃が押収されたが、
「道警には全く意味がなかった」と。
その後銃器対策課を外された稲葉氏は自暴自棄に陥って逮捕、
裁判の被告人陳述でこれまでのヤラセ捜査を告白するも、
道警は事実が出なかったとしてこれを否定。(2003年2月・道議会で)
しかし密輸を知っていた当時の上司や情報を持ちかけたSがその前に
自殺したことで疑惑はやぶの中に包まれたままに。
しかし、あるロシア人に対して違法のおとり捜査をSと仕掛けて、
拳銃を持ってくる替わりに中古車と交換するとおびき寄せ
船からSに銃を渡したところを道警が逮捕した一件があった。
それを稲葉氏が裁判で証言し、道警とSが隠蔽をした事実が
明らかにしたことで再審無罪になったこともある。
事件が起きたのが1997年、それから20年経ったこと。
稲葉氏は自らの使命感を持って仕事を続けたのにも
かかわらず、法に違反したことで道警から切り捨てられた。
しかしこの行為を見てみぬふりをしていた側の
責任を問われることがない。
そしてこれが警察の体質が再び問われることになる。
しかしそのことにどれだけの人が気が付くのだろうか。
拳銃や覚せい剤は自分に関係ないからというのは、
間違いだと思う。
これ以外の事件でも警察の不祥事が相次いでいる。
そしていつそのような事態に巻き込まれ、被疑者になるかは
決してわからないのである。
「自爆」この題名の意味は重い。
それに至らしめたのは果たして誰だろうか。
自己責任では結論づけられることではないはずだ。