沖縄慰霊の日(6月23日)と読書と

何度も書いているが

今年は沖縄に行くことをあきらめた。

そのかわりに沖縄関係の本を読んだり

映画を見たりグルメ(といっても沖縄そばカップ麺)や

お酒(といっても泡盛ハイボールなど)を味わったりして

いろいろと本土と沖縄の距離を考えたりした。

その読書の1冊目はこれ。

松戸で映画を見に行ったときに物販で買った

森口豁さんの「紙ハブと呼ばれた男~沖縄言論人 池宮城秀意の反骨~」

彩流社刊・2019年)。

戦前は「沖縄日報」戦後は「ウルマ新報」を経て

琉球新報」の記者を経て、ジャーナリストから

「平和のための百人委員会」を設立させて

沖縄から全国へと平和運動とを発展させた

「火付け役」として活躍したのが

池宮城秀意だ。しかし戦前の大本営発表の報道に

嫌気がさして県立図書館の職員になるも

突然の召集(徴用だったのが兵役)によって

沖縄戦不本意ながら巻き込まれて

まともな兵役ができず本島南部まで逃げ通した結果

捕虜となり、その時に撮影された横顔を森口さんが見て

「池宮城さんが捕虜のころじゃないのか!」と。

 

本土出身の森口さんが

ウルトラマン」の生みの親である

金城哲夫さんと家族同然のお付き合いだったのをきっかけに

復帰前の沖縄に記者として

ジャーナリストとして

のめり込むきっかけを与えてくれたのが

当時「琉球新報」の社長だった池宮城秀意だった。

 

しかし池宮城氏は経営悪化にともなう労使紛争が激化した責任をとって

1974年に社長を退いて、森口さんも琉球新報から

日本テレビの沖縄特派員に転じて「NNNドキュメント」で

多くのドキュメンタリーを本土に送り続けたために

直接の関係は途切れた。

 

しかし、本土復帰後に「いけみやぎ しゅうい」から

「いけみやぐすく しゅうい」に読みを改めて

日本に返ってきても

天皇制と同化して、米軍基地をそのままにして

 再び戦火に琉球(ウチナ―)が巻き込まれて

 集団自決をしたくない。」という信念を貫いたことから

反基地・平和で「沖縄のことは沖縄が決める」の、

オール沖縄大田昌秀翁長雄志玉城デニー)」へ繋がる道筋を

池宮城氏がつくり、

それを森口さんがしっかりと見届けた。

「紙ハブ」とはアメリカにも日本政府にも屈せずに

逆に恐れられる立場にまでになったという

沖縄にとっての大きな象徴だったのである。

もうひとりの「カメジロー(瀬長亀次郎)」なのである。

 

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2冊目は

すでに予選が始まっている高校野球にちなんで、

沖縄代表の常連校になった沖縄水産高校や

豊見城高校などで監督を務めた

裁弘義(さい ひろよし)を追いかけた

「沖縄を変えた男ー裁弘義 高校野球に捧げた生涯ー」

(松永多佳倫著・集英社文庫・2016年)だ。

高校野球といえば名物監督がつきものであるようだが

裁弘義は沖縄戦の時まだ幼児で母親におぶわれて

逃げた時に背中に焼夷弾によるやけどを負い

周囲は火を消したため命は助かったが

その痕を背負いながら65年の人生をすべて

「野球だらけ」の日々を貫いた。

少年時代に米軍基地で見た風景から

野球は日本ではなくMLB(大リーグ)に学ぶのが一番だと知り

科学的なトレーニングを取り入れ(器具はすべて手作り!)

投げ打ち勝つだけでなく走塁やエンドランを生かした

「機動力野球」もいち早く導入させて

小禄豊見城の両校を甲子園に導き、

その後荒れたままの広いグラウンドをひとりで整備することから

沖縄水産を夏の大会準優勝に導くまでに

荒くれた生徒に鉄拳制裁で抑え込んで、

その一方で寮生活を整備して野球部をまとめ上げ

甲子園出場への道筋を再びつくった。

また補欠の部員たちの就職の世話まで行うこともあった。

「どうせ本土に勝てない」という負け犬根性を

沖縄からなくし、

それが沖縄尚学の選抜優勝(1999年・私も甲子園でナマで見た。)

そして興南春夏連覇(2010年)につながった。

ちなみに裁監督の沖縄水産も1988年の京都国体で

優勝した(甲子園を含めて県勢初優勝)ことをこの本で知った。

また、あの大野倫(元巨人・ダイエー)の

「監督を殺してやりたかった」発言は

別に自分が言ったのではなく

当時は甲子園で優勝するという期待のなかで

周囲の期待や思惑がこんがらがって

「肘が壊れた大野をなんで裁監督は投げさせるんだ?」

という疑問から出てきた「たぶんそう本人が思ってるんだろう」と

いうことだった。

むしろここで投げさせなかったら

みんな揃って悔いが残ったかもしれないということだった。

ことしもまた、新たなドラマが始まるかもしれない。

(なお解説文は、映画版で裁監督を演じたガレッジセールのゴリさんが書いている。)

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