13日に東京で行われた福島第一原発事故で生じた
除染土の今後についての意見聴取会が行われた
模様を詳細に伝えていたが、
環境省が再利用や埋立てで処分させるために、
その手引き案を早くまとめて実行に移そうとする動きに
批難の声や訴えが相次いだ。
現在、汚染土は福島県内の大熊・双葉町にある中間処分場に集約されているが、
そのうちの放射線濃度の低い土は道路や防波堤などの資材として再利用され、
残りは県外で最終処分されるとのことだが、
福島県としては膨大な量の土が地元の復興の阻害になるから
早く県外に持って行ってほしい。一方の県外は引き受けたくないとの
声が多い(南相馬市で2017年4月から始まったのを皮切りに、
昨年夏から茨城県東海村と栃木県那須町で埋立てなどの実証実験を実施中。)
しかも県外では汚染のあった地域にすべて埋立てにするのに、
福島では一旦前述の中間処分場に集めて基準値以下の土を再利用させる。
その値は1㎏あたり8000ベクレル以下。事故前の基準値は
1㎏あたり100ベクレル以下だから、利用した後の管理や責任が
あいまいになれば何かの健康的影響があっても
引き受けた自治体や住民の「自己責任」で負担を負うことになる。
「遮断や飛散の防止策をとるなど、適切に管理する。だから
値が高くても大丈夫」と環境省側は説明しているが、
「あまりにもいいかげんな扱い」(国際環境NGO FoEjapanの満田夏花さん)
「管理の対策を講じるより汚染土を使わないほうが安全」
(生協パルシステム東京の松野玲子さん)などの憤りや指摘があった。
そして地元からも、当然のことながら
「南相馬で再利用が進めば他の地域で及ぶことが明らか」と反発の声が出た。
(除去土壌の再生利用実証事業に反対する市民の会・中村桂子氏)
これに対して飯館村で復興アドバイザーを務める田中俊一氏(元原子力規制委員長)
は、同村の長泥地区で農地造成で汚染土を引き受ける替わりに
国が手つかずだった地区内の除染を引き受けた例を挙げて
「(この決断を受け入れた長泥地域の住民の)一人一人の考え方はわかる。
応援するのは当たり前」と環境省の肩をもつ発言で反発の声を一蹴した。
また「これは民主党政権で決めた関連法に基づくもの」として
「国会議員が責任を持つ必要がある。市民に意見を聞くということでは
なくて」と答えにならない意見しか述べなかった。
当然ながらほかの専門家なら
「(前略)除染を条件に長泥の住民に苦渋の選択をさせたこと
が民主国家としてアウト」(環境学者の糸長浩司・日大特任教授)
「皆さんは東電に優しすぎる。汚染された物は全て東電に引き取らせる
ことを前提にすべきだ。」(糸長氏とともに飯館村の調査を続けてきた
私は今中さんの意見に最も同意する。というより
事故当初はむしろ世論はこの意見が多かったが、
汚染土の量が膨大になったことと、電事連と国と
最近はネットのメディアでもそのような意見を聞かなくなってしまった。
「国は、地方公共団体の協力を得て、汚染廃棄物等の処理のために必要な施設の整備その他の放射性物質に汚染された廃棄物の処理及び除染等の措置等を適正に推進するために必要な措置を実施」
「○国は、汚染への対処に関する施策を推進するために必要な費用についての財政上の措置等を実施 ○本法の措置は原子力損害賠償法による損害に係るものとして、関係原子力事業者の負担の下に実施 ○国は、社会的責任に鑑み、地方公共団体等が講ずる本法に基づく措置の費用の支払いが関係原子力事業者 により円滑に行われるよう、必要な措置を実施」
これが田中氏が指摘された汚染土などの処理にかんする特別措置法だが、
(2011年8月30日施行)いまの国がやっていることは
自治体の意見を無視するか、無理矢理強行させようとしているかの
どちらかといった感じで、しかも費用の支払いについても
東京電力にどれだけの負担(廃炉同様年々増大している)をさせるかも
あいまいになりつつある。
なにより再利用に関するリスクも今のままでは「誰も責任を取らなくても良い」
という結末になりかねない。
「(後始末は)孫や子どもにも関わる。他の原発で同じ状況が
生まれたらどうするかという問題もある。そこを含めて
考えなければならない。だから何度も何度も、
福島でも意見聴取会を開いてほしい。」
(木幡ますみ・大熊町議会議員)
住民の意見を聞かないで「地元の自治体と合意したから」といった理由で、
勝手にいい加減な再処理と埋立てを許してはいけないと思う。