「旅するダンボール」を見て

先週の木曜日、ドキュメンタリー映画

「旅するダンボール」をCS放送で見た。

新聞記事でそういう作品があると知り、記憶していたのだが

想像以上のすばらしさだった。

お金がなくて財布を買えなかった時に

持っていたダンボールでそれを作り、

やがてこれが国立新美術館で売られるほどの

芸術作品にまでなったことで注目を集めた

島津冬樹さんの活動が主な内容だが、

日ごろ仕事でダンボールを見ないことがない自分にとって

「段ボールに恋した男?」のキャッチコピーに対する好感と、

そこから始まる新しい出会いととりとめのない

イデアと希望に満ち溢れた物語のような光景には

わくわく感が止まらない気分を覚えた。

屋久島のジャガイモのダンボールのデザインから

「最近はゆるキャラ(作品は2018年の公開)が多くなった。」

「FreshとPotatoのPOPのタッチを微妙に変えている。」などから

どんどんこのデザインの良さ(個性)を掘り下げて、

ついにはこのダンボールが生まれた故郷を探す旅までしてしまう。

長崎の青果会社から熊本のダンボールの印刷会社、

そしてこのデザインの生みの親まで、

そして島津さんが個人的にやっている

「段ボール里帰りプロジェクト」まで。

そこにはモノに対する愛情だけでなく、

それに携わった人々への感謝と共感、そして

共生へのメッセージが込められているといってもいいだろう。

ダンボールはモノを運ぶためにある。そしてその役割を終えれば

すぐゴミ扱いになって捨てられる。しかも

ふつうの紙ゴミと違って簡単に燃やすこともできないし、

資源ごみとして回収するにしても手間と人手がかかってしまう。

ダンボールを使って何かを作るとなると

一見貧乏くさいといったイメージも持たれるかもしれないが、

使いやすく、かつ元のダンボールのデザインを上手に活用すれば

「こんな財布もいいかもしれない」「むしろ環境にいいのなら欲しいくらいだ。」

これが将来へのひとつの希望につながるとこの映画は静かに呼びかける。

島津さんはキャンプ場から海外の旧ホテルなどを会場にして

ワークショップを積極的に開いている。

じつはこういう場所ほど「かわいいダンボール」

を見つける機会がたくさんあるからなのだ。

ある場面では会場でもらった空ダンボールで財布をつくり

もらった先(屋台)にプレゼントしたら、

お礼にイモのチップスをもらった「物々交換」が出来たと。

そこからまた楽しいリサイクル(アップサイクル)活動が活発になる。

でも島津さんは大上段に現在の世界が抱える大問題に取り組む

というよりは、ダンボールから大切なものをつくるという

楽しさをゆったりと続けている。それが

見ている側にも何かほっとさせる。それが救いにもなる。

なお財布の作り方も映画の中でしっかりと公開している。

興味のある人はDVDで何度もみてトライすることも出来る

のもいい。

carton-movie.com