映画「遠近を抱えた女」をネット配信で見た

本当ならば映画館、というよりは

ミニシアターで見るはずだった。

しかしコロナウイルスの影響で

ネット配信を何とかアクセスさせて

観ることが出来た。

大浦信行監督の

「遠近を抱えた女」である。

f:id:shiraike:20200506210512j:plain

東京新聞の4月29日朝刊で

知り、有給休暇をとった6日の夜に見た。

大浦監督は「あいちトリエンナーレ2019」に

昭和天皇の肖像を用いた作品を発表したが

この映画ではその肖像などをコラージュした

版画が燃やされるシーンが出てくる。

そのためどの映画祭でも上映が断られていたが

2月に行われたブリュッセル独立映画祭(ベルギー)では

オープニング作品に選ばれて高い評価を得た。

その中身は主演女優(あべあゆみ)の

ドキュメンタリーそのものだった。

ドラム缶がドーンと爆発するシーンから

前述の天皇、そして入れ墨(タトゥー)を

入れるシーン、劇団の稽古、

一人暮らし、そして援助交際

はじまりがあるようでない。

終わりがあるようでない物語。

そこで突き詰められるのは

自己の存在を誰が認めてくれるのか。

その表現はどうあるべきなのか。

いや、表現の手法なんか

自由であり、だから

みんなが当たり前のように認めている

疑問のない存在感をぶっ壊しても

いいのではないか、ということ。

もちろんそれをやろうと思えば

自分が想像する以上の

エネルギーが必要であること。

その覚悟が必要か?

しかし、映画の中では

そのようなシーンが出てこない。

全部自然体で進んでいる。

そこにあるのは

内なる自分と向き合うこと。

普通に生きることとは

自分を否定することでもある。

ではその逆でいくとどうなるだろうか。

まさにそのことを考えさせてくれた一本である。

答えは?

そう簡単に出ませんよ。

ひょっとしたら

観る人の数だけ

多くの答えが出てくるのではないか。

私はそう思う。

 

この配信は8日で終わりなので

興味のある方はぜひお早めに。

(注・この作品は成人向け映画です。)

vimeo.com

cinefil.tokyo