NHK特集ドラマ「家出娘」で感じる自死遺児の「思い」

ある日突然、おかあさんが

なくなった。もう二度と逢えない。

それはわかっている。

どんなに悲しんでもそれは変わらない。

それがあることをきっかけに

またよみがえってくる。

そして悩んで苦しんで周囲と衝突して

そこから、生きるってなんだろうと

思い始める。

 

支援しているあしなが育英会からのレターで

きのう10時にNHK総合で放送された

創作テレビドラマ大賞作品の

「家出娘」を見た。

 

主人公の江井はるか(木村湖音)はお母さんが3年前に亡くしてから

お父さんと2人暮らしだったが、

再婚話を聞いて怒って

お母さんの位牌を持って家出したのだ。

向かった先は叔母の和歌子(ファーストサマーウイカが好演!)の家。

前半は和歌子とはるかの2人が共同生活を送る「日常」

ドキュメンタリーのように進んでいく。

石塚嘉監督があしなが育英会に取材協力を依頼したことで

異例ともいえる独自の演出が実現した。

極端な感情や表情を無くして

飾りのない生活風景をそのままドラマにしたのだ。

金魚が死んだとき、はるかは歌をうたう。

思いつきらしく簡単で「やすらかにねむってね」と

それに合わせて和歌子もうたう。

そこには悲しみも涙もなかった。

和歌子は役者の卵でゾンビに変化する役でテレビに出た。

それをはるかが大笑いしていた。

和歌子はそれを遠くで見ながら

「なにか違うんだよな」とつぶやく。

はるかはいつも笑顔がいっぱいではないが

暗い表情も見せていない。

叔母の和歌子も「なぜ家出したの?」と問い詰めずに

お母さんがなぜ死んだのかということも言わない。

ごく自然に一日を過ごす。

それだけだった。

ここまではお母さんの自死を知ってるのは

お父さんの清治(よゐこ有野晋哉)と和歌子だけ。

はるかの記憶はお母さんにおんぶをしてもらった

ことだけだった。

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後半、お母さんが眠るお墓の前で

「お母さんはもう逢えないっていわれたんだ」と口にして

すすり泣いたはるか。

一緒に来た和歌子はただそれを見つめているだけ。

黙ってその場で「寄り添う」だけだった。

その後のシーンでは一転して

「泣いておはぎ食べて鼻血出して忙しいなあ」と和歌子。

もう笑顔に戻ったはるか。

ひとつの救いを見た。

そしてお父さんのもとに戻ったはるかは

家に帰る途中、逆方向の

海が見える高台へ一気に走って登って

叫んだ言葉は「生きるで。」

 

はるかはその時、初めて

お母さんの心に向かい合いながら

生き続けることを誓ったような

静かなラストシーン。

私にはそう見えた。

 

「日本では1日平均10人以上の子どもが

 親を自死で失っていると推計される。」

 

遺児たちは失った親の分まで人生を送る。

その見えない思いをもっと知って、

考えてもらいたいという

メッセージを改めて

このドラマで受けとった。

そんな気持ちだった。

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