プルミエール 私たちの出産

いまCSチャンネルのムービープラスで「プルミエール 私たちの出産」(2007年・フランス)を見終えたばかり。
お産といのちの誕生について本当に考えさせられた映画だった。
月の満ち欠けには、お産にも大きな影響があると言う。世界中をかけてさまざまな「誕生」の瞬間とその前後の
ドキュメントを追ったこの映画は、時代の変化のなかで「変わる出産の現場」と「変えることの出来ない生命誕生の尊厳」を同時に写しだそうとしている。
急速な経済成長を遂げているといわれるベトナムホーチミン産婦人科医は1日120人の出産が自分の病院で行われていることを紹介したうえで、
自宅の出産よりも病院の出産のほうが確実だと語る。しかしこの医師も日食を見たときに、きょうはものすごいことになるぞとつぶやく。
その一方で、フジテレビの「エチカの鏡」でも紹介された吉村医院(愛知県岡崎市)の日常も紹介されていた。近代的な医療機器を使いながらも
お産は自然の摂理であって医療行為ではないという理念のもとで、出産直前まで薪をわり、ご飯を自分たちで作り、共同生活を送るかのような
日々のなかで出産の日を待つという、日本の昔ながらのお産に立ち返ったやり方が紹介されていた。
その一方で医療設備が十分でない環境のもと、昔ながらの習慣と神への祈りを受けて出産をするアフリカやアマゾンの少数民族も紹介されている。
しかしこの映画の全体を占めているのは、メキシコでやっているイルカたちと出産まで共にする風景だった。自然と融合して決して母体にも胎児にも
影響がない出産の方法を考えるとこの方法が最も最善であるともいえるし、最も贅沢であるかなあという感じがして、あまり強い印象を持たなかった。
そしてこの映画を見終えて思った。
子どもが生まれることをみんなで祝福する。このような当たり前のことが困難になってきている。
それは経済的に貧困な国のみならず、日本のような豊かな国でも起こっている現実だ。
新しい命の祝福のために出来ることは数多くあると思う。しかしその時にぶつかる壁とは、
未来の夢や希望をこの子に与えることができるかというジレンマだ。
イルカと共にしながら子どもを産んだ夫婦には、家族に新しい希望と夢を得ることを出来たという喜びに満ち溢れ
周囲も祝福していたが、子どもを産んでも未来を保障することが出来ずに他人に身売りする家族もこの映画のなかにあった。
出産の神秘性よりも出産における現実を最も写しだしたこの作品は、私たちに未来への課題を突きつけるようなメッセージがある。
昔は子どもが生まれることが何があっても大きな喜びではなかったか。
子ども手当」がなぜ支給される日本になったのか、私はどうしてもこっちのほうを考えてしまう。

プルミエール ~私たちの出産~ [DVD]

プルミエール ~私たちの出産~ [DVD]