ビキニ環礁と第五福竜丸だけじゃない 水爆実験と悲しきクリスマスソング

「政府が俺たちにしたことは最悪だった

 兵士が犠牲にあった

 海に背を向けて座らされた

 どんな結末になるか知らなかった

 兵士は弱い男になって帰国した

 俺たちはその先に待っているものを想像もしなかった

 それはほんの数年後に現れた

 それが家族や子どもたちを泣かせたんだ

 核実験は地獄だった」

 

25日の早朝(24日深夜)に見た

NNNドキュメント

南海放送(日テレ系)が連続企画で制作する

放射線を浴びたX年後」の最新ものが

取り上げたのは

1957年5月に南太平洋のマーシャル諸島の東側にある

クリスマス島でイギリスが行った

水爆実験と

その現場近くにいた

当時の若者たちだった。

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(写真はすべて同番組より)

最初に出したのは、

当時にクリスマス島で核実験のために駐留した

元イギリス軍兵士が

あの時に負った被害とそれで

人生が大きく狂わされたことを

訴え続けるために作られた歌。

まさに、

悲しきクリスマスソングなのだ。

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(兵舎の向こうに真っ白なきのこ雲が見える。)

この歌をテープの伴奏で唄ったその人は

実験場となった海域で駆逐艦の乗組員が

防護服を着用して甲板にいたのに

自分たちは上半身はだかなどの軽装で

その実験の瞬間を見ていたという。

「閃光があって、目を手で隠してそれを見たら

 骨が透けて見えた。」

まさにX線のようだったと。

「自分たちはコントロールセンターに勤務していた。

 水爆の実験はその近くの海で行われた。」

しかしその時は「被ばく」のことなどまったく

考えもしなかったという。

その被害が起きたのは

結婚して家庭を持った時

「生まれた子どもがさまざまな障害を

 持った。またガンで早くに亡くなる

 子どもも出てきた。」

「帰国してからお腹に複数の

 ゴロゴロしたものがたくさんできた。

 胸にはメロン大のしこりが出来て

 2度も摘出手術をしている。」

放射能の被害は15代に渡って

 続くといわれている。

 私たちの家族はこれからも

 ずっと病気だらけで生きていくことになる。」

 (番組で証言した元兵士の家族の声を

  抜粋して要約。)

しかし、イギリスの軍法裁判所は

これらの健康被害による補償請求を

棄却した。

「私たちの政府は恥じるべきです。

 若い兵士を派遣して醜いことをさせ

 そのうえでそこであったことを

 認めようとしないのです。」

 

番組はイギリス軍のみならず

日本人にも目を向けた。

この実験が行われた時に

クリスマス島の近くでマグロ漁の遠洋航海をした

高知・室戸町(現・室戸市)の

第七幸鵬丸だったのだ。

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実はこの航海の状況が

当時の教育向け記録映画として残っていたのだ。

「荒海に生きる」という題名で。

当時18歳だった

檜垣昌作さんが初の遠洋航海をすることが

中心になっていたのだが、

2年前にビキニ環礁の核実験で

被ばくした第五福竜丸の騒動があり

当時は町を挙げての核実験反対の

集会などの活動が行われた。

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もしも航海の最中に核実験が行われたら

イギリス海軍の指図に従って

クリスマス島周辺海域の通過することが出来ない。

その周囲を遠回りをするのが

大変だからである。

普通なら中止もやむを得ない。

しかし、第七幸鵬丸は出航したのは

実験に抗議するためでもあったからだと。

結局マグロ漁は5月末から6月まで

丸一か月も行われたが、

世間からの反響や

マグロに対する風評被害などが

一切なかった。

すでに第五福竜丸の件で

政府は「安全宣言」を出したことで

当時のマスコミなどが

詳しく突っ込むことがなかったからだ。

そして檜垣さんらは

半世紀以上経った最近になって

証言の聞き書きなどで

写真を見ながら当時のことを思い出していた。

「(食事のために)マグロやカジキの腹をさばくと

 ガンになった肉のようなのが

 たくさん出てきた(記憶がある)。」

それでも獲物は食べていたという。

檜垣さんら周辺は健康の影響は

特に受けていないという。

 

コロナウイルスに非常事態宣言は

実質的に解除されたようだ。

今後は自己責任による

感染予防がいま以上に強いられそうだ。

その一方で、

検査や医療体制の充実が求められているが

いまだに防護服のかわりに

ポンチョとか雨ガッパとか

言ってる始末だし、

消毒液を契約していない医療機関などに

代引きで送る詐欺まがいのことを

政府がやっているとおバカな話まで出た。

あのビキニとマグロの騒動は

早い段階で幕引きをしたため、

福島第一原発事故の被ばく被害の

救済策に生かされない結果を生んだ。

唯一、政府機関や専門機関がやったことは

「都合の悪いデータや情報は隠す」

これだけだった。

クリスマス島の水爆実験は

日本人が被害を負いながらも

歴史から消えてしまおうとしている。

今の政府にとっては

第七幸鵬丸は

都合の悪い存在なのか。

そしてこれらの歴史を

なかったことにするように

コロナウイルスの非常事態宣言」も

私たちの記憶からすぐに消してしまうつもりなのか?

自分たちの命にかかわる

大きな問題なのだ。

水爆実験の放射能被害も

コロナウイルスによる「人災」も

今後しっかり検証すべき

課題なのだ。

決して忘れてはいけない。

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