映画「おかあさんの被爆ピアノ」を見た

コロナ禍で延期がありながら

今月から公開が始まった

映画「おかあさんの被爆ピアノ」が

やっと見ることが出来た。

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新宿の「K’s cinema」で、10時から。

84席を半分にしてソーシャルディスタンスを保って

鑑賞をなった。当然マスクはつけたまま。

約2時間の上映で見たものは

矢川光則さんが地道に続けている

被爆ピアノの活動(調律も含めて)、

そして原爆という重い歴史と向かい合う

広島の人々の複雑な思いだった。

 

歴史を語り伝えることの難しさは

年々大きくなっているが

この映画では

被爆者の家族から

何を本当に語るべきなのか、そして

考えることは何かということ。

事実があっても

受けとめてくれるのか。

自分たちが痛めつけられた

戦争の傷跡を理解してくれるのか

そのジレンマが一番の問題だということを

改めて知った。

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(上映後のトークは、喫茶店店主役の鈴木トシアキさんと五藤利弘監督【右】)

武藤十夢さん演じる菜々子が

おばあちゃん家のピアノが矢川ピアノ工房に寄贈されたことを

知った、それも母・久美子(森口瑤子さん)が

内緒でやったことで

矢川さんに会い、被爆ピアノのことを知るために

広島へ行くのだが、

それは決して一筋縄ではいかなかった。

詳しい話を聞いた相手は

「いまは進路が大切だから」と

頑なに言わなかった母・久美子だった。

おばあちゃんは

学徒動員の集合時間の前に

買ってもらったピアノを弾いていたが

原爆で死ななかったのは

落ちた楽譜を拾ったからだった。

広島の原爆は多くの死者を出したが

紙一重の差で助かった命もあった。

しかし、それは

けっして喜びだけで済まされるものでは

なかったのだ。

(久美子には兄がいたが5歳の頃に白血病

 亡くなったという話もあった。)

 

 

「あそこに原爆が落ちて良かったですねという

 学生の感想を聞いた。

 平和公園は昔、町並みがあって

 そこに人が住んでいたことを

 知らなかったんですよね。」

五藤利弘監督がトークで披露したこと。

この映画では爆心地からの距離と

あの頃の広島の歴史を丁寧に説明している。

学校では教わらない被爆の事実を

掘り起こさせるために。

その一方で

「最初に被爆ピアノのことをやったとき

 原爆のことに何も関心を持たなかった。

 でも、それでいいんよ」

佐野史郎さん演じる矢川さんのセリフ。

それは

自分たちに出来ること、

関心を持てることから

あの頃の歴史へとアプローチ出来れば

そこから戦争とは何を失うのかを

自分事として考えられるのではないかという

重要なメッセージを訴えているように思えた。

 

 

ちなみにベートーベンの「悲愴」が

この作品で重要なテーマになっている。

おばあちゃんがピアノを始めるきっかけは

家の手伝いの最中に

茶店から流れた

この曲がきっかけになった。

そして娘の久美子も

おばあちゃんからこの曲を教わり

菜々子も8月6日の広島で

この曲を弾こうと練習を始める。

 

そしてこの最後は

決して悲愴感が

ありません。

見ていただければわかります。

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