「放射線ニコニコ笑っている人に影響ない」はやっぱりウソか

きのうの東京新聞は一面と特報面で、

2011年3月21日に「(福島第一原発事故で放出された)放射線の影響はニコニコ笑っている人には出ません」と事故直後の講演で発言した山下俊一・長崎大教授(福島県放射線健康リスク管理アドバイザー)が、

同じ日に子どもの甲状腺被ばくについて「深刻な可能性がある」と全く違った見解を言っていたと情報公開請求で入手した放射線医学総合研究所(放医研)の文書で明らかになったと伝えている。

講演は午後2時に行われたが、その日の昼に県庁内のオフサイトセンター(OFC)で放医研職員の保田浩志と面会し、その夜に保田氏が結果としての文書として書き留めたとしている。一日のうちに全く違ったことを言った。二枚舌を使う行為になる。

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もっとも山下氏は東京新聞の取材に対し、講演が行われた福島市では原発から離れていることからただちに影響はないと発言したのみで、避難区域に指定されたエリアでは最も悪い状況を想定していた保田氏(その他)の対応に異をとなえなかったという意味

で、今後予想される被ばく、特にこどもの甲状腺被ばくなどの影響に関することは最も考慮しなければならないと意見を言っただけで、

「(保田氏の書き方では)今後さらに状況が悪くなるような印象があるがそのようなコメントをしていない。安全域(?)を広くとった状況把握に異をとなえなかっただけ。」と自分から積極的に警鐘を鳴らしたわけではないという言い訳ぶり。

これに対し保田氏は同紙の取材に対して「(山下氏が)OFCにいたのは一時間ほど」で当時は子どもたちがどれだけの被ばくをうけることになるか、原子炉の状態がどうだかがわからない上で「チェルノブイリと同じようなことが起りうる」と意見が一致。甲状腺被ばくで子どもにガンが増えるかもしれないといった内容の話をしていたという。その上で全県エリアで対策を考えるべきといった発言をしていたはずだと答えた。また保田氏がOFCで医療班にいたときの班長だった放医研の立崎英夫氏も

「(山下氏は)場合によってはさらなる避難も考えなければいけない」と発言していたと語り、原子炉がまだ安定していない状況の中で説得力のある先生に話をしてもらってよかったということだった。

山下氏はチェルノブイリでも原発から遠いところでも汚染が高い場所があることから

食品制限をすることや甲状腺に詳しい先生が福島県医大にいるから協力してもらったほうが良いという助言ももらったことで、かなり具体的で問題意識が高かったようだ

との話まで出てきている。想定外の事故で頭がパニックを起こしていたとしても

本当に危機があるのなら専門家に「最悪の事態」の対応を意見したその口で

まるで非科学的な冗談話をのたまうことが出来るのだろうか。

まさに「ニコニコ笑っている人に影響ない」はジョークを超えた

フェイク発言で到底許されるものではないはずだ。

ちなみに山下氏は事故から半年後の2011年9月11日、「福島民報」の特集紙面のインタビューで

県北中部で放射能量が高くなったことで県外に転出する人が増えていることから

暮らし続けている人への健康の影響についての質問にこう答えている。

放射線防護の影響上、両地区の現在の線量では健康への影響はまずないと

考えています。安心の確保のため、福島(県立)医大が中心になって

中長期的な健康管理となる県民健康管理調査を行い、残る人たちの健康を

責任を持って守るとともに県民全ての検診受診率の向上を目指し、予防医療の

態勢を取ります。」

しかし県民健康管理調査から漏れた子どもの甲状腺がん患者が出てきていることも

後の報道で明らかになり、県の小児科医会はエコー検査の縮小を求める意見まで

出てきて、予防医療の体制そのものが骨抜きになっている。

なにより山下氏自身が福島県が行った調査で甲状腺がん患者の数が206人にのぼっていることをどう受け止めているのだろうか。

それこそニコニコ笑っていられることはできないだろう。

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