昭和時代のテレビを賑わせた名役者がまた旅立った。
財津一郎さん。14日に急逝、
89歳の大往生だった。
(写真は20日発売の日刊ゲンダイより。)
私が記憶に焼き付いているのは
3年B組金八先生の第1シリーズだった。
まだ桜中学に赴任したばかりの
金八先生を頼もしく支えた
社会科の左右田先生役がとても板についていた。
この時初めてウイスキーの牛乳割りのことを知った。
牛乳の成分が胃袋に着くから悪酔いしなくて済むという
セリフには驚いたが(当時の私は中学生)、
いまでは居酒屋で焼酎の牛乳割りが出てくる時代。
なにかさりげない個性というものを見た気がした。
そしてなんといっても
「キビシー!「サビシー!」
「許して、チョーダイ!」。
これは吉本新喜劇に出ていた時に
アドリブで出したものから人気になって
そのまま続いているのに驚いた。
昨年だったか、
CS放送で「てなもんや三度笠」を見る機会があったが
まだ白黒テレビの時代から財津さんは
この3つの決めコトバを自在に使って
みんなを楽しませてきたのだから
役者を超えたエンターティナーというところだが
その姿勢は低く、まさに庶民的だった。
財津さんの最後の代表作品は
「タケモトピアノ」のCMではないか。
その映像でも財津さんは年齢を感じさせない
「ピアノ売ってチョ~ダイ!」
「そのトーリ!」
それが9月いっぱいで契約満了だと知ったのは
訃報を聴いた後のこと。
さりげなく私たちの前にひょっこり現れて
瞬間芸ではない定番の芸で引き付けて
余韻を少し残して去っていく。
もうこのような、役者を超えた「芸人」は
テレビで見られないかもしれない。
お孫さんの一人は役者の道を進み
日曜劇場の「下剋上球児」に出ている。
歩んだ道が引き継がれることを望む。
ご冥福をお祈り申し上げます。