横浜事件に関する公示を見る

今日の読売新聞にこのような公示が出ていた。

あの横浜事件治安維持法違反容疑による言論弾圧事件)による再審による上告審で
元・容疑者の1人だった小野康人さん(1959年・昭和34年死去)の無罪が確定したことで、
逮捕拘留から釈放までの期間における国家補償が決まったとのことだ。
私はこの公示を見て、2月に埼玉県立久喜図書館の「本のリサイクル」で手に入れた、
横浜事件・妻と妹の手記」(1987年・高文研)を取りだした。
この本は小野さんの妻・貞さんともう一人の被告人の妹による手記だが、
小野さんの手記だけでも、いわれなき言いがかりで突然家宅を捜査され(1943年・昭和18年5月)
突然夫が拘引され、周囲から非国民よばわりされ、単なる編集部の旅行が共産党再建準備会議だといわれ
拷問を受け続ける日々が2年以上もあったのだ。
小野さんは終戦後の9月に懲役2年、執行猶予3年の判決を受けている。
のちに拷問警官は被害者側の告訴で有罪判決を受けているが、小野さんらにかけられた「前科」はそのままになり、その個人の尊厳と人権をかけて
小野さんの遺族らを含む被害者側が再審請求を行ったのは1986年(昭和61年)7月3日。
それから再審による無罪判決が確定したのは昨年3月30日。そして国家賠償の請求によって
今年2月4日。実に再審申し立てから約24年。再審前の有罪確定から65年もかかっているのだ。
あの時の治安維持法による特高警察のやり方はまちがいだったというのは
私が中学校で歴史教育を受けた1980年代以前からわかっていたことだった。
しかしいわれなき罪を負った人々のレッテルをはがすには、どれだけの苦労と日々がかかったろうか。
国を相手に裁判を起こして勝てるわけがない、単なる金欲しさじゃないかとの誹謗中傷を受けながら
やっとのことで国を謝罪させることが出来た。この喜びは大きかっただろう。
しかし小野さんや手記を書いた貞さんも、もうこの世にはいない。
家族、親子2代で戦った成果は980万円。十分だと思いますか?それとも安いと思いますか?
横浜事件 関係史料
http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/yokohamajikenn.htm