11月11日は早朝(10日深夜)と夜に
日韓対立の状況に鋭いメスを入れる
2つのドキュメンタリーが放送された。
日テレのNNNドキュメント「不信の棘 ”徴用工”と日韓の行方」
北日本放送(富山)の制作で、
地元に本社がある「不二越」の徴用工訴訟を中心に
した内容だった。
第一次訴訟では原告側敗訴に和解が成立し、
原告に3500万円を支払ったが、
第二次訴訟では敗訴後、
「日韓請求権協定により裁判で権利は行使できない」として
和解はしなかった。不二越は第一次の和解ですべて解決ずみとしたが、
実は第一次訴訟で二審敗訴のあとに、
原告側弁護団が判決にある「原告の債権は時効によりすべて消滅している」
ことを考慮して時効のないアメリカの裁判所に
提訴することも考えたという。
そうしたら不二越のほうから和解へ向けての働きかけがあった。
しかし第二次訴訟では逆にアメリカのほうで裁判が行われては
かなわないということで「日韓請求権協定」を利用した
ということだが、
結果的にこの訴訟は韓国で行われ
2014年ソウル中央地裁の判決は
「不二越は一人当たり約800~1000万円の賠償金を支払え」。
これが2018年10月の日本製鉄(当時の新日鉄住金)の
大審院判決にまて至ったというわけだ。
番組内では
2005年の韓国・民官共同委員会で
その協定における経済協力金には補償のための
協力金が「包括的に勘案されている」として
「これは韓国政府の責任で解決すべき問題だ」
と元・駐韓大使の武藤正敏氏に語らせている。
その一方で、日韓交渉の文章では
「過去の償いということではなしに」
経済協力と社会福祉のためなら協力金を
行う意義があるとして
当時の日本政府には徴用工に対する
真相究明や謝罪の意思がなかったことが
明らかにもなっていると。
(同志社大学・太田修教授)
写真の女性はイ・ジャスンさん(87歳)。
第二次訴訟の原告の一人だが
13歳の時に学校で勧誘を受けて
女子挺身隊に入ったら平和に活動ができるし
生け花を学んで勉強も出来て
お金を儲けることが出来るという
映画を見させられたが全てがうそだった。
騙されて日本へ来た以上は
不二越は賠償金を支払うべきだし
自分たちは民間企業を訴えたのであって
一般の日本国民を恨んでいるのではないと語った。
現在も富山では、地元市民の有志によって
不二越裁判の連絡会が活動を続けている。
右翼団体の妨害に耐えながらも
高齢で日本へ行くことが出来ない原告たちに代わって
不二越に賠償責任を負う事を訴え続けている。
午後10時50分のNHK・ストーリーズ「事件の涙」は
「だから私はホームに立つ」。
2001年の新大久保駅転落事件で日本人カメラマンを救助しながら
助からなかった韓国人留学生イ・スヒョンさん(当時26歳)
の母・ユンチャンさん(69歳)が、
亡き夫と共に
息子の意思を受け継いで奨学金制度を立ち上げて
日韓の橋渡しのために動き続けたことを紹介した一方で、
両国の関係が悪化し続けたことに
「なぜそういうことになったのでしょうか」と苦悩する表情も伝えた。
韓国では留学生を募るためにスピーチコンテストが中止に
なった半面で、日本で行われた奨学生の歓迎パーティーでは
5年前に奨学生になって日本企業に勤めるまでになった
青年との再会に喜ぶ姿も映し出される。
過去の不幸な歴史のみならず、
日韓のわだかまりを越えて助け合い
友好を強めた時代さえも
いまは忘れ去られるどころか
消してしまおうとする動きがある。
だからこそこの2つの番組をやった意義は大きいが、
はたしてどれだけの日本人が見てくれただろうか。
これがものすごく気になるところだ。