首相 ハンセン病家族に心から謝罪も「補償」への課題は重く

きのう12日、安倍首相はハンセン病家族熊本訴訟に関する

談話を発表し、同時に政府声明も発表しそれが閣議決定したことで

原告団も期限の12日までに控訴しないと決めたため

先月28日の判決が確定。そして政府は全ての患者家族の

あらゆる差別や偏見に向けての救済措置を検討することに

前向きな姿勢を示した。

「 政府は、令和元年6月28日の熊本地方裁判所におけるハンセン病家族国家賠償請求訴訟判決(以下「本判決」という。)に対しては、控訴しないという異例の判断をしましたが、この際、本判決には、次のような国家賠償法民法の解釈の根幹に関わる法律上の問題点があることを当事者である政府の立場として明らかにするものです。
 1 厚生大臣厚生労働大臣)、法務大臣及び文部大臣(文部科学大臣)の責任について
 ①熊本地方裁判所平成13年5月11日判決は、厚生大臣の偏見差別を除去する措置を講じる等の義務違反の違法は、平成8年のらい予防法廃止時をもって終了すると判示しており、本判決の各大臣に偏見差別を除去する措置を講じる義務があるとした時期は、これと齟齬(そご)しているため、受け入れることができません。
 ②偏見差別除去のためにいかなる方策を採るかについては、患者・元患者やその家族の実情に応じて柔軟に対応すべきものであることから、行政庁に政策的裁量が認められていますが、それを極端に狭く捉えており、適切な行政の執行に支障を来すことになります。また、人権啓発及び教育については、公益上の見地に立って行われるものであり、個々人との関係で国家賠償法の法的義務を負うものではありません。
 2 国会議員の責任について
 国会議員の立法不作為が国家賠償法上違法となるのは、法律の規定又(また)は立法不作為が憲法上保障され又は保護されている権利利益を合理的な理由なく制限するものとして憲法の規定に違反するものであることが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってその改廃等の立法措置を怠る場合などに限られます(最高裁判所平成27年12月16日大法廷判決等)。本判決は、前記判例に該当するとまではいえないにもかかわらず、らい予防法の隔離規定を廃止しなかった国会議員の立法不作為を違法としております。このような判断は、前記判例に反し、司法が法令の違憲審査権を超えて国会議員の活動を過度に制約することとなり、国家賠償法の解釈として認めることができません。
 3 消滅時効について
 民法第724条前段は、損害賠償請求権の消滅時効の起算点を、被害者が損害及び加害者を知った時としていますが、本判決では、特定の判決があった後に弁護士から指摘を受けて初めて、消滅時効の進行が開始するとしております。かかる解釈は、民法消滅時効制度の趣旨及び判例最高裁判所昭和57年10月15日第二小法廷判決等)に反するものであり、国民の権利・義務関係への影響が余りに大きく、法律論としてはこれをゆるがせにすることができません。」(朝日新聞デジタルの記事より抜粋)

これが政府声明の内容だが、結果的に異例ともいえる首相の決断が

このような屁理屈きわまりない文章を超えて、

救済を広げ、これを謝罪の形にしたいとしているが、

熊本判決でも2001年(平成13年)12月31日までに

「具体的差別及び認識なし」と認めた20名(全体は561名)は

損害額に差が出ている(30万円)ことについても

完全な救済を求めることを徳田靖之弁護士(訴訟団共同代表)が

訴えており、熊本訴訟以外の患者家族にも補償と謝罪を確定させるには

まだ問題が山積している。

「話すことができる人間が先に話し出せばいい。

 家族にハンセン病患者がいたことを是とする社会ではまだない。

『今も療養所に身内がいるよ』ということを、

 茶飲み話でできるような社会をつくっていかなければならない」

原告団の林力さんのコメント。毎日新聞のweb記事より)

ここまでにするには多くの時間がかかる。

首相は早いうちに家族と面会したい意向を

官房長官が定例会見で示していたが

原告弁護団は、7月中にも政府との協議を始めたいとしている。

参院選に勝ちたいためのパフォーマンスで

当事者が取り残されることはあってはならない。

まず首相が患者家族に土下座して謝ることから始めることだ。

心からの謝罪とはそういうことなのだ。

そうでなければ本当の解決策を見つけることなど

出来るわけがない。

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(6日の講演会でいただいた資料より)

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