うずみ火ジャーナリスト入門講座・第2日目

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おとといキャンパスポート大阪で行われた、
新聞うずみ火ジャーナリズム講座は前回同様2人の講師を迎えて行われた。
1時限目は読売テレビ(YTV)報道局ディレクターの堀川雅子さん。

堀川さんは「NNNドキュメント‘10」を現在担当しているが、
YTVに入った動機もNNNドキュメントを見たこと、そして
自分自身の好奇心とやりがいを求められることと、男女格差がなく情報を扱う職場だからだそうである。
プロジェクターで製作、編集の現場と報道局の内容を説明した後、
犯罪被害者報道の現場に接してきた自身の仕事について話してくれた。
入社2年めに阪神淡路大震災で全壊した母子寮の取材(再建されるまでの2年間)をしたのを始めに、
1997年には、神戸の小学生連続殺傷事件が起こる前に
少年犯罪で息子を殺害された母親から、「事実をどこからも教えてもらえない」と電話があり、死亡診断書や事実関係が書かれたメモを
後で送られたが、報道するかどうか迷ったあげくそれができないままあの事件が起きて、
慌ててその母親に電話して、初めて少年事件の特集を放送したという。
その後、約10年の間に少年法改正や犯罪被害者支援に関する法制度の見直しなど
が動いてきたが、堀川さんたちも神戸の事件を何度も(約50本)特集し、また電話をした母親である
武るり子さん夫婦の活動を紹介した「無念の果てに〜遺族の闘い〜」なども製作している。
また「大阪教育大附池田小殺傷事件」「JR尼崎脱線事故」についても
長期的な視点で大きな事件のその後を追うドキュメントを作ってきたとのこと。
常に大きな事件に向かい合い、速報とその場にある事実を伝えるのとは違った
ドキュメンタリー番組をつくることで、
ニュースの真実を追うことは取材相手との人間関係の構築と、
客観性と主観性の双方をどう使い分けていくことが大切だとのことで、
今年5月30日に放送された「償いのカタチ〜知られざる事件後の無情〜」
の一部を放送映像を交えて紹介してくれた。
事件が起きた後、裁判で有罪が確定し刑に服したほとんどの加害者が
賠償金(民事で確定したケースで)を被害者やその遺族に払われない事実を追った内容で、
この問題を番組で取り上げることは難しいという。
加害者は刑期を満了したことで一般人になることと、
その謝罪の現場にカメラが入ることは互いの人権侵害になりかねないとの懸念があるからだ。
(いのちのミュージアムの時に見た、映画「0(ゼロ)からの風」にもこの話が出てきた。)
堀川さんは取材の途中で「もう今後は私たちをとりあげないでほしい」と拒絶する被害者もいたと話した。
しかし取材対象者に時には自分をさらけだすことで、なぜこの問題をとりあげ、どうしてこんな質問をするのかということ
を理解をしてもらうことで人間関係(取材後も)をつくり、そこから得られた声を生かすために
観察者(客観的)の視点で編集・製作をしてきたと語った。
最後に、番組製作者として大切なことは、
継続すること(心)対話の大切さ(耳・口)背景を探る(目)切り口(鼻=嗅覚)だとのことで、
そのために「汗をかくこと」「恥をかくこと」「手紙を書くこと」が取材活動で必要だと付けくわえた。
31日には堀川さんの後輩が作った作品「臓器移植」が放送されます。
http://www.ntv.co.jp/document/


2時限目は毎日新聞大阪夕刊編集長の松井宏員(ひろかず)さんが、
「新聞に明日があるか」の題で講義を行った。
大阪地裁が証拠品で押収したフロッピーディスクを改竄したのを朝日がスクープ(新聞協会賞)
したことで検察改革につながり、また3年の取材をかけて、沖縄密約が首相官邸に届けられたスクープをとった読売(これも新聞協会賞)
の仕事が評価される一方で、
毎日が共同通信に加盟し地方紙(北国・徳島など)との連携を組んで、朝日・読売・日経連合との競争を余儀なくされる
厳しさと、何のために記者になったのかわからない人が新聞社に増えたことで記者の劣化も増えたと語った。
(精神を病むケースや人員が減らされて仕事のアフターケアができないことも多くなった。)
松井さんは政治経済などの硬派記事ではない軟派記事(社会部系)を書き、
デスクを担当した経験から、
「記者自身が記事の中身に対してどれだけの感性をだせるかにかかっている」
が大切だということで、3つの記事に関する話をしてくれた。

この記事は大阪市の動物園担当が書いた(現在はアフガン取材)もので、
なぜ2頭のカバは一緒にできないのという女の子のつぶやきから始まる記事で、
記者が動物園の人に取材して、その質問に答えると言う内容だが
短に事実を伝えるのではなく、子どもの素朴な疑問から
人間とカバの親子関係の違いや、野生動物の飼育問題まで掘り下げているとして
高く評価できると松井さんは感想を述べた。
また、京都市立弥生中学校が統廃合でなくなるという情報を聞いた記者が
この学校が同和地区など複雑な家庭事情を抱えた生徒を支えるために
人権教育やその内容をテーマにした人権劇をやってきた歴史を記事として残したこと。

http://mainichi.jp/kansai/reportage2010/archive/news/2010/20100610ddn041040009000c.html
またそれに対する読者からの反応と声や記者の思いをまとめた
「記者の目」や、
自転車部出身の記者が手作りで「ツール・ド・信州」というイベントをたちあげ
参加する「自転車バカ」たちの姿を追った記事なども紹介してくれた。

記者は会社員ではなく「個人商店」で仕事することが
大切であること。
そして記事にするテーマに忠実であり、そして書くチャンスを逃さないことだと
最後に強調した。
質疑応答では記者クラブの必要性について、
警察などがなかなか情報を出さない時に記者クラブが共同で動いたこと
もあることから記者にとって、あると便利なのは事実だが決してマイナス面ばかりではない
と答えた。
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