旧・博物館動物園駅がアートになった

8月17日に東京都美術館に行ったあと、

国立科学博物館から東京芸大へと

歩いてみると、

京成電鉄博物館動物園駅だった建物で

何かビラ配りをしていたので

なんだろうかと寄ってみると、

この中で展示をやっているとのことなので

整理券をもらって中に入った。入場無料。

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駅を閉じてから東京都の選定歴史建造物に選定されるなど、

たびたび注目を集めている駅舎なのだが、

当然ながら普通は扉が閉められたままだ。

この機会を逃さない手はない。

入ってすぐに目にしたのは

列車運行のダイヤグラムがくるくるとまわっている情景。

ちょっと驚いたが、いかにも駅らしいオブジェだと

思い、階段を降りる。

ところどころでネジが置かれた

小さな机のようなものがある。

1945年6月に国家総動員法に基づく

陸運統制令を盾に、

この駅を含む当時の上野地下線が接取され、

運輸省(現・国交省)の臨時鉄道指令室

にするため、省線(いまのJR)の客車8両が

ここの線路に運び込まれたそうだ。

いまの京成上野駅も軍需品の生産が計画されていたという

ことも初めて知った。

ネジは軍需工場の職を得た作者の亡き父の手記を基に

激しい空襲の中で逃げられない日々をおくった

「あの時の夏」を映し出していたのだった。

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踊り場では電車の正面ライトを撮った写真が。

雨に濡れているようだった。

「光のシークエンス」

おおきな光が灯火管制で隠された時代。

雨粒が涙のように見えた。

そして階段の途中でドアがあり

ここから先へは進めない。

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改札口だけが灯がともっている。

まるで営業をしているかのように。

そして京成電車が通過する音が聞こえる。

このアートの題名は「未完の螺旋」。

螺旋階段を降りて、また昇る。

そのときに私たちの視線はどこにあるだろうか。

上か下か。それともどこか。

いつでも何かを探し続けているはずだが、

本当に見つかるだろうか。

近くにあっても、すぐそこに落ちていても

だまって素通りしているのではないだろうか。

だから終わることのない螺旋を通して

いま生きている時間を一時的でも

立ち止まる必要があるのではないかと

静かに語っているように思えた。

大洲大作さん、ありがとうございました。

なおこのアートは

台東区芸術文化支援制度によって

助成されている。

10日から18日までのわずかな期間の開催だった。

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