映画「クロッシング」の衝撃

今日は映画「クロッシング」(2008年韓国)を見てきました。この映画は南北分断をテーマにした物語ですが、予想以上に大きな衝撃を受けました。
貧しくても慎ましく暮らしていた家族。それが妻の結核によって全てが暗転する。薬も金も食べ物も手に入らない中で夫は中国への密入国をする。
一人息子にすぐに帰って来ると言いながらも、お金をすぐに得るために決断したことが、ますます家族そのものを永遠の別れへと引き寄せてしまった。その悲しい結果には誰を恨み誰に怒ればいいのかといった思いにさせられます。
またこの映画では脱北の困難を丹念に描いています。夫も息子も脱北を望んでいなかった。しかし生きるために中国と北朝鮮の間の川を渡った。
その時の寒さと警備隊にいつ見つかるかもしれない恐怖。
また中国に入ってからも直接韓国大使館へ行かず第三国の大使館またはモンゴルなどに駆け込まなければ、中国の公安当局に捕まり強制収容所送りになってしまう。
脱北して韓国に行くことが出来ても北朝鮮に残る家族を呼び寄せることも会うこともブローカーに頼るしかない現状には、夫の発した「なぜ南朝鮮しか神は救わないんだ!」このセリフに現れています。
中国に行こうが韓国に亡命しようが家族が再会して普通の幸せに戻れるかはわからない。
南北分断の長い歴史は、こんなに普通に生きたいと思う朝鮮の人々に激しい刃を向けているのがわかりました。
この映画には雨が降るシーンが効果的に出ています。雨は乾いた大地を潤す反面、降りすぎれば洪水ももたらします。
しかしこの時に降った雨は登場した人々の渇きそうになった心を慰め、そして希望を諦めないための雨だったのです。
また強制収容所のシーンはまさに平和に生きる私たちにはショッキングなものですが決して目を反らしてはいけないと感じました。

クロッシング」ホームページ
http://www.crossing-movie.jp