「甲状腺等価線量」と「実効線量」 専門用語を巡る大混乱ー続・隠されていた100ミリシーベルト被ばくー

きのうの東京新聞の朝刊特報面でおとといの一面の続きともいえる

記事が載っていた。

ツイッター等でこの100ミリシーベルト被ばくならたいしたことがない

との意見があった「等価線量」のことだった。

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国があの原発事故が起きた時に測定した際に基準値となったのが「甲状腺等価線量で100ミリシーベルト」で、その時の結果が「全員の基準を下回った」との発表がされたのだ。しかし実効線量にすると「4ミリシーベルト」にすぎないとの声もあった。

「この100mSvは甲状腺等価線量。記事中の癌のリスク部分でで参照している100mSvは実効線量。甲状腺等価線量100mSvの実効線量への寄与は、係数0.04を掛けて4mSv(以下略)」 (天文学者・大石雅寿氏のツイッターより) 

環境省の副読本の「放射線被ばくの早見図」では100ミリシーベルトの基準は確かに「実効線量」の基準で載っているのは事実だ。

http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2014/03/03/1344729_2_1.pdf

ところが前述の原発事故直前の測定の基準値はなぜか「甲状腺等価線量」ということになっている。放射性ヨウ素が体内に取り込まれると甲状腺に集まり内部被ばくをもたらすことから、この時に放射線の種類を踏まえて算出される量としての数値がこれであるのに対して、

放射線が当たった臓器や組織の等価線量を計算した上で、計数をかけて足した分が

「実効線量」になるという。

ならば、なぜ「甲状腺等価線量」が「実効線量」という最も信頼できる数量を差し置いて国や自治体(この場合は福島県)で重要な言葉として使われるようになったのか。

この記事ではまさにその点に疑問を投げかけている点に注目しなければならない。

専門家の目からすれば「そんなもんは簡単に計算すれば実効線量でわかることだ」と切って捨てることができる。しかしあらゆる人たちが副読本やマスコミ報道などで

知って学んだとしても、この2つの言葉の違いを明確に理解できることができるだろうか。

ちなみに平成26年(2014年)2月改訂前の高校生用の副読本の「放射線被ばくの早見図」では

100ミリシーベルトについては「実効線量」の注釈が書かれていない。

(平成23年【2011年】10月作成)

http://www.mext.go.jp/b_menu/shuppan/sonota/attach/1314239.htm

早見図は改訂前もその後も放医研が実質的に作成にかかわっているが、

あの「双葉町の少女から100ミリシーベルト」が出たことで後付けの形で「実効線量」の説明が加えられたのは間違いないだろうし、しかも付け加えられた部分は一読ではわからないほど小さい。

結局は「甲状腺等価線量」は専門用語として使われているのは事実だが、

本当は「実効線量」で測定の結果で出すのが正しかったのであるし、

当時の政府や専門機関がどうして気がつかなかったのか、それとも混乱の中で曖昧に

してきたのかこれがよくわからないし、この理由を明らかにしなければならないだろう。

専門家たちは東京新聞朝日新聞を批判するよりもこの点を問題にしないと

放射線科学をよく理解できない素人を完全に納得させることは到底無理だろう。

www.tokyo-np.co.jp