うずみ火ジャーナリスト入門講座・第1日目

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(きのうのブログからの続き)
13時にキャンパスボート大阪(大阪駅第2ビルの4階)で行われた、
新聞うずみ火主催のジャーナリスト入門講座(大学生・一般人対象)の1日目は
沖縄タイムス記者の謝花直美さんの講義からはじまった。

沖縄タイムスは女性記者が多く、みんな元気で頑張っているという話から
「最後に、あの人はジャーナリストだったと言われたい」と思いを語った謝花さんは、
自分の立つ位置(女性と沖縄)から少数派・弱者の声を伝える回路になることが
新聞社にいることの意味を感じていると言った。
そして普天間などの基地問題において
沖縄と本土の報道に落差がある要因に、
本土は客観報道に依存したあまり、沖縄発の「弱者のために闘う報道」に隔たりが出来たと指摘した。
そのこぼれ話として、アラブの専門家である自民党小池百合子氏が
「沖縄の新聞はアラブの新聞」だとピントがはずれた批判をしたり、
本土の世論は「鳩山(内閣・当時)やめろ」の大合唱のときも、
沖縄はそれほど厳しい声が出なかったのにその事実を
本土マスコミは伝えなかったことを話してくれた。これは私も知らなかったことだ。
「大江・岩波」教科書検定裁判のときに、
沖縄の歴史で共有化されている「集団自決」の証言を特集記事にしたときは
自由主義史観研究会(裁判の事実上の原告)やその共感者のみならず、
沖縄タイムス社内からも1面記事にすることの提案などで
無関心や圧力があったという。
しかし少数の取材班で長期連載(2005年夏にキャンペーン開始、連載は07年4月から11月)を続けた努力が、
約11万の県民大会へと世論を動かしたことから(参加者から「タイムスよくやった」と声をかけられたそうだ。)、
「小さな闘い」からジャーナリズムを始めて行くことの大切さを私たちに伝えてくれた。
謝花さんはアジアプレス(TVニュースの外報でよく出てくる)の野中章弘さんの言葉で気が楽になったという。
「商業紙はいつか折れる、その期間をできるだけのばしたらいい」
私も質問をした。「本土と沖縄の壁がこれから厚くなりそうだが、これを破るにはどうしたらいいのでしょうか(要約)。」
謝花さんの答え「基地も安保にからむ問題は沖縄のみならず全国(岩国など)でおこりうる問題であり、これは半年ないし1年前に始まったことでは
ない。辺野古移転はNOと民意(地元)はついている、双方とも長期的な視点でこれからのことを考えてほしい。」
「闘う沖縄の新聞」のテーマ通り、新聞の存在意義を常に考え、仕事を通じて読者に自らの思い(=闘い)をフィードバックしようとする
謝花さんに「信頼は自らの力で勝ち得る」ジャーナリストの強さを感じた。


次の講義は朝日放送(ABC)スポーツ部ゼネラルプロデューサーの奈良修さん。
「取材民族とロケ民族」というテーマだったが、ご自身の入社当時からの経歴を振り返り
1980年代に起きたさまざまな事件、ニュースステーションがなぜ人気番組になったか、
イラン・イラク戦争において日本人が理解できなかった
アラブ(イラク)人・ユダヤ人・イラン(ペルシャ)人の違いと対立の歴史、
パリ支局駐在中のダイアナ妃事故死報道となぜ陰謀説がおきるのか(愛人がアラブ系の人物だったから)
そして「おはようコール」「ム―ブ」のプロデューサーを経て現在に至る話をしてくれた。
あの豊田商事事件(1985年)で永野一雄社長が自宅で殺害されたときは
前日に殺人犯らしき人物が永野宅で「永野はいるか」と自分をふくむ取材クルーに聞いたそうだ。
それで翌日にテレビカメラのあの衝撃の映像に発展したことから、
取材陣(その日は奈良さんは現場にいなかった)が殺人教唆罪(なぜ犯人を止められなかったかということで。)で訴えられたことがあったそうだ。
しかしあのとき犯人が永野宅で何をやろうとしていたのかは、ドアからも窓からも見えなかったことで
犯人が外へ出たときに「永野を殺した」と言ったのを聞いて初めて事の重大さを知ったという。
「でも、映画「コミック雑誌なんかいらない!」では窓が大きくなっていて、殺人の瞬間を取材陣が知っていたこと
 になっていました。でも実際は何が起きているかはわからなかったんですよ。」
後半はマスメディアの苦境のなかで、テレビも地デジ化でテレビそのものの不要論が出ていることを
話したうえで、将来のテレビ局は外部の制作者に「放送する機会」を与える場に専念すべきだと思うと語った。
「製作予算の減少で外部スタッフを切っているが、それは将来的には問題になる。
 むしろ優秀な外部の制作者を育てる場所にテレビ局はなったほうがいいと思う。」
質疑応答では、野球中継は視聴率はとれるけどスポンサーがつかない。
だから商品を買ってくれる年齢層に受ける番組ばかりになったとの話が飛び出すなど、
いまのテレビ局は作る側の苦悩を視聴者はもっと知ったうえで、
これからの在り方を考えて、テレビに踊らされすぎるようにしなければいけないと痛感した。
なおこの日はABCの小寺佑子アナウンサーなども奈良さんの講義に耳を傾け、
ときどき奈良さんなどの質問などで突っ込まれることもあった。
みんなジャーナリズムの将来を真剣に考えているのだ。
なお最後に大学生は朝日新聞記者によるエントリーシート講座、
私を含む一般人はうずみ火編集長の矢野さんによる記事の書き方講座がおこなわれ、
謝花さんの講義要旨(400字以内)の課題が出された。こちらは月曜日に提出ずみ。
2日目はあさって13時から同じ場所で行われる。
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