うずみ火ジャーナリスト入門講座を終えて(1)

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10月中の土曜日に4週連続で行われた
新聞うずみ火主催のジャーナリスト入門講座は30日に全日程を終了した。

もともとこの講座は、読売新聞元大阪社会部長でジャーナリストの黒田清さんが
マスコミ界を志す大学生たちに開いた「マスコミ丼」だった。

黒田さんが亡くなってから、うずみ火の代表である矢野宏さんが
受け継いで毎年秋に行われているのだが、学生だけではなく
マスコミ・ジャーナリズムを知りたい、社内報など記事の書き方がわからないといった
社会人も受講が可能なのが他のマスコミ講座の大きな違い。
(学生向けのエントリーシート講座は「マスコミ丼」出身の新聞記者が講師を務めた。)
まずこの業界を知ることから始めてほしいと主催者の思いが、
充実した4日間の内容につながり、普段知ることのできないマスコミ人の素顔をたくさん見ることができた。

私は2度目の参加になったが、昨年は業界の裏話などを聞くたびに驚きばっかりで
あっという間に終わってしまった感じだった。
そして今年は情報の受け手として何を考えてニュースに接すればいいのかと思い続けながら講師の方々の話を聞いていた。

昨日は尖閣諸島沖の中国船衝突ビデオがYoutubeに流出されたニュースで
日本中が大騒動になったようだが、
この時点では「ストレートニュース」のための「ニュースソース」が見つかっただけのことだ。
すなわち政府側が隠していた衝突の事実が「sengoku38」なる者がインターネットの場で
全国民に公表した、しかしこの人物がいったい誰かがわからず
とりあえずその人物について、国民(政治屋を含めて)は「知る権利」に応えてくれたことに喝采をおくっていることを
マスコミが伝えていた。
しかし、そのビデオが明らかになったことで当の国民がどう考えているかは
さまざまではないのか。
「いまさら遅い」「外交下手」「全部ノーカットで公表せよ」「尖閣自衛艦を常駐させよ」などなど。
それらの意見を多数票で集めてみると、「菅内閣はケシカラン」ということになる。
ただ問題なのはこの事態を受けて私たち日本人は中国に対してどういう形で向かい合わなければいけないかということだ。
この話になると必ずマスコミの大半は困ったような顔をする。
「中立・公平・公正」だからである。
そして必ず頼りにするのが「ジャーナリスト」達である。
(コメンテーターの話を間に受けるような人は少ないと思うよ。)
ジャーナリスト達は中国問題などの情報に精通しているといっても
自分たちが望む解決策を提供するとは限らないし、
そのようなことをやろうとすれば、業界の「自主規制」で排除されることがある。
その結果、国民世論がマスコミの誘導のもとで歪曲され
気がつけばとりかえしのつかなかった結論を国民全体が下すことになってしまう。
ジャーナリスト入門講座の講師の方々も、私を含む受講生も共に危惧しているのは
「世の中、マルかバツかで簡単に結論が下せるようなことばかりなのか。
 でも現実にはそれ以外の声もあることだし、それが伝えられないことに
 いつかなってしまうのだろうか。」
この不安である。
「最近のマスコミはやたらに世論調査をやっている。それは記者自身に取材能力がなくなってしまったからだ。」
毎日新聞・松井宏員さん)
ジャーナリストとは国民に自分の主張を押し付けたり、「世論はこう感じている」ことを伝えるのが仕事ではなく、
自分たちの視点で「現代」を掘り起こしていくのが本来の使命であること。講座を聴いて、改めて考えさせられたことがこれだった。

(講座で配られた沖縄タイムス・謝花直美さんの資料。「新聞研究」2001年5月号より。)
中国ひとつにとっても共産党、軍事、核兵器チベット満州とさまざまな分野のジャーナリストが日本にいるはずだ。
またそれ以外にも中国人のことや中国の生活事情に詳しい人もいるはずだ。
「女性と弱者の視点から伝えて行きたい」謝花さんのような人が
その中にもいるはずだ。
マスコミがこの問題の全てを伝えられないのなら、せめて「ただの人」である私たちが
本物のジャーナリストの声を聴くべきである。
そのなかには私たちがこれからの日中関係について前向きに考えられるヒントが生み出せる
ものが見つかるのではないかと思う。
講座に参加したマスコミ人はみんな自分たちの存在意義に危機感をもっている。
「最後に、あの人はジャーナリストであったといわれるようになりたい。」(謝花さん)
マスコミに入ったからといってジャーナリストであるとは限らない。
ジャーナリズムとは何かを探求する人々を読み手・聞き手として応援したい。
そのために情報を見極めることを大切にしていきたいと講座の終わりに再認識した。

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