岩波ホールで「パリ20区、僕たちのクラス」

きょうは神保町の岩波ホールで「パリ20区、僕たちのクラス」を見た。
第61回カンヌ国際映画祭で最高賞(パルムドール)をとった作品だけあって
週刊誌などの映画評でも話題を集めていたからだった。
物語は、パリ20区のある中学校の国語の授業で、自己紹介文を生徒たちに書かせることから
始まるのだが、本物の授業さながらのシーンが続くのは
フランス版「3年B組金八先生」といった趣きがあった。
反抗的な生徒との授業後のやりとりや、「僕のことは僕にしかわかりません」としか書かなかった生徒が
家族や友人の写真をとって紹介文にすることで良い状態になったと思ったら、再び担任教師と衝突して
退学処分を受けたエピソードや、職員会議(日本と違い、保護者や生徒代表も出席する)で生徒の素行について
減点制度をいれるかどうかを議論するところは、国が違っても教員の苦悩と
生徒の苦渋との衝突は避けられないものだと強く感じずにはいられなかった。
しかし日本との違いもあった。
それはパリ20区はアフリカや中国などの移民が多い地区だったのだ。
家族同士の会話はそれぞれの民族語を話し、必要最低限なところでフランス語を使えばいいと考えている世帯
がほとんどというなかで、義務教育(フランスも15歳まで)のなかで美しいフランス語を
生徒たちに教えるというのは並大抵のことではない。
おまけに「先生はゲイという噂なんですけど本当ですか?」といった質問が
授業中にでることもあるのだから日本とは全く別世界を見た思いだ。
しかし担任はその質問にまともに答え、自己紹介文を書かせることにより
少しでも生徒たちとの距離を近づけようと努力し、生徒たちも戸惑いながらも
少しずつ自分の思いを文章にしてみようと努力する姿は
教育という営みのなかで、現実的な限界を感じながらも
可能性を追求していこうという素晴らしさが心に残った。
最後のシーンで担任は24人の生徒たちに「何をよく勉強した」と質問して生徒たちがそれぞれに勉強したことを答える。
そして自己紹介文を本にしたものを配り、その後に1人の生徒が
「私は何も勉強していない。でも就職コースはいやだ。」と伝えた。
担任は「まだ1年ある。考えることはない。来年の成績次第だ。」と答えた。
中学生の時期は誰もが将来と今の自分の姿に悩んで当然。
だからこそ学校は生徒たちにとってどういう場所であるべきか。
この映画はまさに教育ドキュメントに近い手法で、これらのメッセージを伝えてくれた。
岩波ホール

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