映画「おとうと」は良かった

やっぱり最高だった。映画「おとうと」を昨日無料映画会で見てきた。
鶴瓶さんはまさにはまり役だったが、「ディア・ドクター」といいこの作品といい「浪花の典型的なオッちゃん」役を演じさせたら
もうこの人の右に出る人はいないだろう。しかもそれだけではない。凄みもある。
演ずる人物の人生をしっかり理解した上で、その内面を巧みに見る者たちにしっかりと映し出す演技にそれを感じたのだ。
やはりそこは落語家やテレビ、ラジオの経験が生きているからだろうか。それにしてもその役(丹野鉄郎)になりきることは
本当なら難しく鶴瓶さんのように、個性のある人がやると役柄よりも本人のキャラクターが先に出るものなのに、
そのバランスを整えながら役になりきっているのだから凄いと思った。
吉永小百合さんは美しかった。そして弟・哲郎のすべてを受け止め最後までその人生を見つめ続ける姉(高野吟子)を
演じるその姿はまさに自然体そのもので、激しい時代の流れの中で自分らしくしっかりと生きた1人の女性像を映し出しているようだった。
山田洋次監督は、最近は弱者が見捨てられている世の中だとインタビューで語っていたが、
それゆえに誰もが拠り所にする「家族」の在り方を見つめ直そうとしていたのかもしれない。
この映画のコピーは「家族という厄介な、でも切っても切れない絆の物語」なのだが
ハチャメチャな生き方をする弟としっかりものの姉の間にあった「かけがえのないもの」とは何かを物語のなかに
ちりばめることで、家族という関係でしか得られない「絆」の大切さと素晴らしさを教えてくれるようだ。
また弟・鉄郎が最後の落ち着き先になった民間のホスピスの話を入れたことは山田監督らしいなあと思った。
それから蒼井優さんと加瀬亮さんも良かったし、小林稔侍さんや加藤治子さんの演技も良かった。
当日の会場は超満員。みんな笑いと涙で楽しい時間を過ごしていたようだった。