「『神様』のいる家で育ちました~宗教2世な私たち~」を読んだ

この本を読んだことで

宗教2世の抱えている本当の問題が

やっとわかってきた。

池真理子「『神様』のいる家で育ちました~宗教2世な私たち~」

文藝春秋・本屋がカバーをかけてくれた。)

これまで安倍元首相銃撃事件の容疑者が

統一教会の「宗教2世」だったことで

にわかにこの問題がマスコミの注目を浴びる前から

著者は自身の体験と同じ2世の当事者の声をあつめて

マンガのWEBサイトから発信したストーリーを一冊にまとめたのだが

ここではセンセーショナルな宗教の批判ではなく

親が信者(片方の場合も含めて)で生まれながらにして

その宗教における「信仰上の理由」で

学校やそれ以外のことでさまざまな「制約」があっても、

親が喜んでくれるなら、または家族が幸せであるならばということで

なにも疑いもなく「子どもの時代」を過ごす。

しかし思春期を迎えて

その宗教のあり方に疑問を持っても

家族に反抗するどころか

悩みを打ち明けることもできない、さらに

学校や友人やその他に打ち明けても

「信教の自由」で的外れなことを言われて

ますます悩みを抱え込む。

これが大人になっても長期化して

自殺の道まで選ぶこともある。(第5話参照、WEBはここで中断された。)

それでも親は信仰を盾に子どもの苦しみに向かいあおうとしない。

このようなのは時に「毒親」とか

周囲がその家族を勝手に差別したとかいう問題に

混同したがるが、著者はそれに対して「違う」と(あとがき参照)。

確かにその通りだ。

いくら親が信じていても子どもがそれを信じるとは

限らないはずだ。

もちろん逆の例もあるが、そのような宗教団体が

いま「2世」や「3世」ばかりでそれ以上の拡大が望めず

それが時の政権や与党にすり寄り

自らの影響力を拡大していこうとする。

これは旧統一教会創価学会だけではないはずだ。

(さまざまな宗教のケースがこの本に書いてある。)

その一方で信仰を捨てた2世は

宗教だけでなく家庭からも排除されるのだ。

いまの日本は「個人」のあり方が

国際情勢や経済の悪化などでないがしろにされ

生まれながらの「信者」にさせられても

「自己責任」論に飲み込まれる悪い状態になっている。

きのうの国会でも野党が2世に関する救済法案を求めていたが

岸田首相は旧統一教会の被害者との面会を調整中と答弁したが

具体的なことはあいまいにしたままだ。

だからこそ私たち、その他の人間が

もっとこの内情に目を向けることが

大切なのだ。

著者はこの本が出ることで劇的に社会が変わるわけではないが

親の宗教で苦しんでる2世が自分ひとりで背負い込まずに

苦しかったことを吐き出せるようになってほしいと。

「私たちのことを知ってください」

「ひとりで泣いたら悲しいだけ

 でも10人で 100人で泣いたら

 泣きつかれたあとに

 少し笑えるかもしれないから」

私たちが本当の優しさを取り戻せるために

この一冊が訴えるものは大きい。

たとえ宗教2世でなくても

この問題にはなるべく当事者意識で

もう少し耳を傾けたい。

そう思わずにはいられなかった。

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www.tokyo-np.co.jp

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