「宮本から君へ」控訴審で原告側敗訴「助成金交付せずは妥当」(榊英雄監督「密月」と木下ほうかの件も)

映画「宮本から君へ」の日本芸術文化振興会(芸文振)

助成金交付が出演したピエール瀧覚せい剤所持による逮捕で

打ち切られたことに対する裁判で

3月3日、東京高等裁判所(高裁)で控訴審の判決があった。

足立哲裁判長は原告側の制作会社「スターサンズ」の訴えを認めた

一審の東京地裁判決を破棄して

芸文振の不交付決定を認めた。

逆転敗訴である。

その理由は

「違法薬物の乱用防止という公益性の観点から、

 助成金を交付しない決定をしたからといって、

 社会通念に照らして妥当性を欠いているとは言えない」と。

 交付すれば、

 薬物犯罪に寛容との誤ったメッセージを発したと映画観客に受け取られ、

 助成制度への国民の理解を損なう恐れがあるとの考えを示したと。

一見もっともらしい意見だが、

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芸文振は制作会社にたいして

ピエール瀧の出たシーンをカットしたら

交付するということが

裁量権の乱用」として、助成金をもらうために

意に沿わない再編集をすることになれば、

芸術団体の自主性が損なわれると判断し

不交付とする合理的理由があるとはいえないと判決が出た。

しかし控訴審では逆になったのだ。

つまり「作品そのものには罪はない」と否定され、

もしも主役を演じた役者が

後に薬物で逮捕されたら助成金交付どころか、

「お蔵入り」になっても

薬物乱用の根絶のためなら仕方がないと。

しかし、ピエール瀧自身は執行猶予となったため

日刊ゲンダイの猫の特集号でインタビューを受けているなど、

妙な矛盾が起きている。

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スターサンズ側は

「何の説得力もなく、極めていいかげんな判決だ」(河村光庸社長)として

即日上告したが、少なくとも映画などの芸術における

表現の自由に波紋を広げる判決だと

私もそう感じる。

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(付記)

最近のニュースとして

週刊文春がスクープした

映画「密月」が監督の榊英雄の性行為強要をしたとする記事に

本人が一部を認めたことで

上演が中止になったこと。

また最近では木下ほうかもそのようなことをしていたことも

文春側が続報で伝え、本人もこれを認めて

無期限の芸能界活動中止を発表している。

これも表現の自由

自分たちでその足かせを嵌めたことで

今後の映画界に大きな衝撃と課題を与えかねない。

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(18日発売の日刊ゲンダイより。)

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