いまや戦争は武器のみならず
IT社会の発展による
「情報戦」もエスカレートしている。
ウクライナのゼレンスキー大統領は
アメリカ・イギリス・カナダ・ドイツの各国議会でオンラインによる
演説を行い多くの議員の拍手喝采を得ている。
そして23日には与野党が了解したということで
日本の国会でも行われるそうだ。
その内容はウクライナの戦火における悲惨さを映像で流し
各国の歴史的事実をうまく演説の内容に乗せて
最後に飛行禁止区域をNATOに求める
「Close the sky over Ukraine」という言葉で締めくくる。
ロシア軍に包囲されている中で演出も抜群といわれる
このやり方には
ウクライナだけではなく欧米の著名な「戦争広告代理店」が
プロパガンダに協力しているはずだという指摘もある。
(上の18日発売の日刊ゲンダイ記事から、
作家の本間龍氏のコメントより。)
そこで思い出した。
何年か前に松戸駅前の古本屋で買った
「広告批評」という雑誌だ。
1982年の40号で特集は「またまま、戦争中の宣伝」
(特集の最初のページより。米軍がばら撒いたとされる空襲予告ビラ。)
(イギリス空軍がドイツにばら撒いたビラ。ヒトラーとスターリンの頭髪を印象づける
イラストを用いてナチス政権に味方するのは共産主義ロシアつまり当時のソ連しか
いないぞ、イギリスは容赦しないと警告している。)
第2次世界大戦中に日本やドイツに
連合国側がばら撒いた「厭戦」ビラ、つまり
早く降伏を呼び掛けるというプロパガンダに関しての記事を
山本明さんが書いていたが、
このビラの効果はあまりなかったのだと。
つまりそれだけ当時の「大日本帝国」は
「長い期間の天皇制絶対主義教育と言論弾圧による精神的鎖国」は
ビラを見て読んでも「チンプンカンプン」といった
メッセージそのものを理解不能にしたという。
当時はWEBもSNSどころかテレビもなかった。
あるとすればラジオと新聞くらいだから
自国内におけるプロパガンダは確かに有効だったが
敵国に対する「広告」による攻撃は
対して有効ではなかったということか。
(1982年の英国とアルゼンチンが軍事衝突した
フォークランド紛争の最中で出たアルゼンチン誌の表紙より。
サッチャー英首相はクレイジーだと、自分はワンダーウーマンだと思っているが
悪魔でヒットラーで吸血鬼でと、現在とまったくかわらない。)
では、いまはどうなのか。
確かにお互いが流すSNSなどの情報で相手にダメージを与えているが
「こんなのデタラメだ!」と反撃し、都合の悪い情報は統制を仕掛けるなどは
昔と変わらない。
だが、いまでは個人が自由にかつ
全世界にいつでもどこでも情報や事実そして
自分の意見を流せる時代である。
プロパガンダが国家やそれに近い組織しかできなかった時代が
終りつつあるといっても良い。
ロシアが誤算続きなのは
さながらこの時代の変化を読むことが出来なかったこと。
そしてゼレンスキー大統領が
この動きを巧みに利用することを考え付いたか
前述通り優秀な誰かがアドバイスしたからかもしれない。
もっともこの結末は依然として予測できないし
読み切れない。
それでも「#No war」の声は
全世界で止まることはない。