文化庁映画賞受賞も記念上映会中止で そもそも「私宅監置」とは何か?

「私宅監置」といってもわからない人が多い。

精神科の用語で、患者を自宅の中もしくは

敷地の中に牢屋(座敷牢)のようなものをつくって

隔離のように死ぬまで外へ出さず

閉じ込め続けることを指す。

www.nhk.or.jp

その歴史的事実を取り上げた映画が

文化庁芸術祭映画賞の優秀賞を受賞した。

原義和監督(52歳)の

「夜明け前のうた 消された沖縄の障害者」だ。

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(23日東京新聞朝刊の特報面より)

ところがこの作品の受賞記念の上映会が

あいついで中止になったのだ。

受賞後に映画製作で取材に応じた障害者の遺族が

自身に取材がなかったとか

遺族自身が島を出たことについて

島の女性が「戻りたくても戻れない。つらいと思う。」

と語ったことについて事実誤認だと

受賞が決まったあとに抗議したのだ。

それなら受賞取り消しになってもおかしくないのに

文化庁側は取り下げようとしなかった。

原監督の「異なる箇所はなかった」という意見を認めたようだが

「遺族の人権を傷つけ取り返しがつかなくなる可能性がある」として

「(遺族と監督と)歩みよりさえ見られれば上映する」と

強調していたというから(山田素子参事官)

こちらとしては「はぁ?」である。

yoake-uta.com

私が私宅監置を初めて知ったのは

TBSテレビのドキュメンタリーだった。

この措置は1900年に制定された精神病者監置法に基づくものだが

1950年に同法は廃止された。

しかし、沖縄だけが事実上、本土復帰になるまで(1972年)

行われていた。

その映像から見た現実は最初に書いた通り。

まさに人権蔑視だが、戦後以降の医療環境、

特に精神神経科の領域が整わなかった

ゆえの悲劇といえる。

kakaku.com

だから、

この番組の内容をより多くの人達に知ってもらうためにも

「夜明け前のうた 消された沖縄の障害者」が作られた意義は大きいのだ。

しかし当の文化庁がいったん賞を与えながら

自分たちが主催する記念上映会を中止させるのは無責任極まりない。

 

中止になったのを受けて行われた

自主上映会とフォーラムでも

登壇した識者から疑問と今後への懸念が示された。

 

「糾弾されるべきは遺族でも監督でもなく、

 国だ。(中略)家族がサインして入院される

 『医療保護入院』など今も形を変えて続いている。」

兵庫県精神医療人権センター共同代表代行の

 吉田明彦氏)

「大切なのは、社会にとって重要なのかどうか。

 作品を世に放つことで対立が生まれることがあるが、

 新たな視点にも結び付く。」

(ジャーナリストの綿井健陽氏)

 

ちなみに原監督は

都倉俊一文化庁長官に送った内容証明の最後にこう記している。

 

「私宅監置は国家制度としての隔離でした。

 つまり、国は当事者なのです。

 上映取りやめは、

 国が自らの歴史的罪責を隠蔽することになってしまいます。

 文化庁の判断は、歴史に汚点を残すものです。 」

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問題なのは文化庁は国家の機関として

この映画の抱えた課題は自分たちにあるのかを

自覚しているかどうかだ。

傍観者であることは許されませんよ。都倉さん!

mainichi.jp