映画「タクシー運転手 約束は海を越えて」に泣いた

これが韓流映画の実力というものか。

そして最後に涙が出た。

予想外のことだった。

26日にCS放送の録画で見た

「タクシー運転手 約束は海を越えて」。

最初のシーンでは

ソン・ガンホ演じる運転手の

鼻歌まじりに

民主化を叫ぶデモ隊と催涙弾を放つ軍隊の衝突に

商売の邪魔だとコミカルな演技で

社会の混乱などどこ吹く風といった感じで

話がすすむ。

ある運転手仲間から

外国人が光州まで行きたがっていて

10万㌆出すという話を聞き、

娘と遠出をするための稼ぎにと

劇場前でつかまえ、目的地に向かう所から

シリアスな展開に徐々に変わっていく。

そう、この映画は

1980年5月に起きた

光州事件を自らの取材で

カメラに収めた

ドイツ人ジャーナリストの実話に基づく

作品だったのだ。

進入禁止になったこの町を

なんとか騙しまくって入り込み

民主化運動の学生たちと遭遇し

そこからソウルへ逃げ出そうと思ったら

ある老婆を病院に連れてくはめになり

そしたら客のジャーナリストと学生たちと

再び鉢合わせ。バッグを中に入っていたのを

忘れたことから泥棒呼ばわりされて

さらに地元のタクシー運転手ともめ合うなど

そのハチャメチャな展開に

いったいこの物語はどんな結末に向かって行くのだろうかと

心配でずっと釘付けになってしまった。

しかしここで話の筋をしっかりと整えたのが

一般市民に催涙弾どころか

銃まで発砲して殺す

空挺部隊の蛮行だった。

「信じられない・・・」

ここから主人公の心が大きく変わっていく。

ここにいる人々が望んでいるのが

「約束を守ること、果たしてくれること」だった。

そしてみんなが

その約束を果たすために

立場と地域などの違いを越えて

一つになる。

そして自分たちを支配する政府は

ウソとデマをまき散らしたことに

主人公の怒りが爆発し、

そして周囲の協力で

一度は光州を逃げ出すが、

「俺はこれでいいのか」と自問自答した結果、

再び光州に戻り

「必ず金浦空港まで送る」と

最初に交わした約束を果たそうとする。

しかし、空挺部隊と市民の衝突は

もはや戦闘行為と同じになり

軍の秘密警察には

自分やジャーナリストの顔は割れている。

この中でタクシーは

無事ソウルに帰れるのか。

そして主人公は娘との

約束は果たせるのだろうか。

 

この映画のすごいところは

光州事件や韓国の民主化などに

興味や関心のない人にも

見てもらいたいという思いで

作られているということにある。

最初は面白さや世間を斜に構える

ストーリーがありながらも

最後は権力や暴力に対する

批判と怒り、そして

人と人とのつながりと信頼こそが

すべてを良い方向へと変えることが出来る。

だからどんなことがあっても

真実を追いかけることを

あきらめてはいけない。

そんなメッセージを受けとめたようだった。

そしてあきらめないことを貫いた果てに見た

喜びとか感動とかでは

いい表せない崇高な「何か」を

見たような気がして

最後に、涙が出た。

こんな素晴らしい作品に

これからも出会えるだろうか。

 

あともう一つ。

主人公の住まいは

あの「パラサイト」と同じ

半地下の家だった。

ソン・ガンホはこの作品でも

主人公を演じている。

ひょっとしたら、

2017年から

アカデミー賞への道は

始まっていたのではないだろうか。

そんなものを感じてしょうがなかった。

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