「演じて看る」に介護の苦悩と向かい合うヒントを掴んだ

年末の12月30日の早朝に

放送されていた

瀬戸内海放送テレビ朝日系列)制作の

ドキュメンタリー

「演じて看る~91歳 認知症介護を救った演劇」

を見て(録画で)

いずれ自分たちも当事者になる

介護の苦悩にどう向かい合えばいいのかを

つかむヒントをもらった。

(第22回ものづくりネットワーク大賞最優秀賞受賞記念の再放送)

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いったいどういうことなのか?

岡山市に住む岡田忠雄さん(93歳)は

10年以上前から妻の郁子さん(95歳)が

認知症で要介護5の判定などを受けたことで

慣れぬ家事などをこなす中で

一番つらいのが互いの意思疎通ができなくなったこと

だったのだ。

「最初の頃、『お金がなくなったの。あなた

 とったんでしょ。』こっち あんた まだね

 認知とも知らない。はぁ?と・・・

 『何を言ってんだよ』言うと

 『取ったんでしょ』ってこうでしょ。

 まず頭にくる。

 何回か 殴りましたよ。

 血が出ましたよ クシャっと。」

このような殺伐とした

介護地獄から救いを与えてくれたのが

菅原直樹さん(33歳)だった。

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(写真左が「おかじい」こと岡田忠雄さん、右が菅原直樹さん)

菅原さんは介護福祉士を本業にしながら

介護の問題をテーマにした演劇活動を行っていて

菅原さんが劇に関するワークショップを

開いたら、そこに岡田さんが来たことが

出会いになったのだ。

岡田さんは若いころに日本舞踊などの芸事の

特技があり、

定年になってからは岡山で映画の撮影があると

エキストラに率先して参加していたとのこと。

認知症の方の こちらからすると

 おかしな言動に対して

 つまり いわゆるぼけですね、

 を受け入れるのが

 正すかったっていうと

 今 受け入れたほうが

 いいんじゃないかで

 認知症の人の気持ちを尊重する関わり方は

 やはり ぼけを受け入れる演技じゃないかと

 思ったんですね。」

つまり演劇というバーチャル体験をすることで

認知症になった側の気持ちに立って

それらを受け入れることを

学んで理解できるということなのだ。

劇団「OiBokkeShi」は

岡田さんが最年長の団員。

しかしそれが生きて

公演では主役級の配役に抜擢されて

介護の合間に週一回のペースで稽古をこなして

舞台に立っている。

そして岡田さんもこの活動で

郁子さんは20代以前に自分が戻っているのでは

ないかと感じたという。

番組では

2017年のクリスマスと

2018年の3月の公演の模様を伝えていたが、

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(左半身麻痺のカメラマンが岡田さんの役柄。介護士は外国人でセリフは英語の設定。

 クリスマス公演にて。)

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(人の手を借りてでも写真を撮り続けることをあきらめない主人公を

 演じきった岡田さん。)

公演を重ねるごとに岡田さんは

自分の介護の日常を舞台の場で表現することが

出来るようになり、多くの観客に共感してもらえることが

生活の支えになっていったのだ。

クリスマスの公演は菅原さんの脚本で

演じるだけだった「おかじい」は

翌年(2018年)3月の劇では

郁子さんの現状にヒントを得て

20代の女性の設定で共演者に認知症を演じてもらい、

自身は日々の介護体験をありのままに演じるという

とても難しい役どころを演じきったのだった。

「同じ立場のね 認知の家族のおる人のためにね

 お芝居をするという事

 その人たち それから

 そういう家族の方のためにね

 何か役に立てばなと思って

 頑張りましたね。」

介護になればどうしても

家族は「引きこもり」の状態になって

外に自分の思いを吐き出せることが出来ない。

それが殺人や自殺などの悲しい事件を

起こすことにもつながる。

自分と家族の状態を客観的に見る機会が

あればそれだけでも辛さを抜け出せる

ヒントがあるのではないか。

演劇でもなんでもいい。

それがもっと出来る場所をたくさん作ってほしい。

この番組を見終えて本当にそう感じた。

そして自分がいずれ介護をする側に

なるまでこの番組のことを

忘れないようにしようと心からそう思った。

「(郁子さんが)ニンジンがきらいだと

 ずっとそう思ったんですよ。」

「(ディレクターが好きだって気づいたのはいつと聞いたら)

 つい最近なんですよ。ハハハ・・・」

これも演劇体験から得られたことだと

岡田さん。

「養老院に入れたらといわれたけど

 そうしなかった。

 いったん入れたらもう戻ってこないでしょ。」

いまでも岡田さんは郁子さんと

同じ屋根の下で生活している。

www.ksb.co.jp

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