映画「あん」

きのう、CS放送「日本映画専門チャンネル」で樹木希林さん主演の映画「あん」を見る。
これまでもたびたび放送されてきたが時間帯のタイミングで生で見るどころか
録画することもできず、やっとのことで録画が出来た。
ハンセン病差別という重い問題をテーマにしながらも、スッと映画の世界に入り込むことが出来た。
それはどら焼き屋を舞台に、その中に入れる粒あんをつくる作業に長い時間がかかることのシーンを
自然な形で入れたことと、あんが変わってから客に入りが変わったことと、
そして樹木さんが演じる徳江が多摩全生園のハンセン病患者であることが徐々に広まったことが
ある日突然客足が全くなくなったことで、それがセンセーショナルな差別の形としてではなく
日常の中に差別が潜り込んでいるリアルな社会構造をさりげなく映し出していることによるものだと感じた。
徳江は自分の周りで起こる変化について激しい感情を表さず、むしろ淡々と受け止めて
誰にも反抗することなくむしろ優しく接して、店の前に咲く満開の桜に喜びを覚え
店主の千太郎が粒あんづくりがわかったころに合わせて
自分が使っていた道具を大事に保管して、同じ趣味で仲良くなった佳子(故・市原悦子さん)に託した
ことには、周囲に翻弄されて流されることしかない人生でみつけた
大切なものを次の世代に引き継ぎたいと思ったからではないだろうか。
以前読んだ本に、ハンセン病は「らい」とよばれ、さらには「天刑病(てんけいびょう)」とも
呼ばれたと知った。死ぬまで刑罰を受けることから逃げられない身に
課せられたものは、自分の身の回りの全てに耳を傾けて
その言葉から生きる意味を見いだすことしかないのだろうか。
あんを煮るときはその小豆と会話する。その小豆はどこから来たのか。
ここに行きつくまでどのような道のりがあったのだろうかを聞く、
徳江のセリフの中にあった。これを押し付けがましい口調ではなく
それでも聞く側の心に響く声が出せる名役者が次々とこの世を去っていく
ことの寂しさを感じる。
夕食での家族の会話、
ぴったんこカンカン市原悦子樹木希林が一緒に出ていた時、
 初めて市原悦子がまともに見えた。」
「そりゃそうよ、樹木さん、安住(紳一郎・TBSアナ)さんにむちゃくちゃな物言いで
 ツッコミばかり入れていたから(笑)。」
このお二人に改めて、合掌。