5月25日、「自由な風の歌コンサート14」の練習を終えた
後に、吉祥寺からまつど市民活動サポートセンターへ移動。
「~都市農業の未来を学ぼう~松戸市都市農業振興計画の
スタートにあたって」というテーマで
講演とトークの会に参加するためである。
小口広太(おぐち こうた)さん。
農業系の専門学校の講師などを経て東京などの
都市農業に関する調査研究や農業実習などもやっていることで
その内容は実に濃密で説得力のあるものだった。
1970年代からに高度経済成長期、そしてオイルショック以降の
低成長期のなかで都市部にあった耕地は、
国の農業施策からの除外、都市計画法(1969年)制定による宅地なみの課税強化、
さらに世論からの敵視などでどんどんその規模が小さくなっていったが、
1990年代末から都市農業に対する再評価が高まり、
そして2000年以降は都市農業振興基本法、生活緑地法の改正
さらに都市農業基本計画を国が策定したことから
その関心と多様性が高まりつつある。
東京だけに限って調査してみると
全体的な農家の世帯数は減っているが、
専業農家の数は逆に増えていて、耕地面積(1経営体当たりの)も
0.5ヘクタール未満が47%を占めているが
(0.5~1.0haは34%)、野菜や果樹を中心とした多様性に富んだ
栽培面積を持っていて、地産地消を主とした
多くの販売形態をもっていることが強みにもなっている。
つまり農地(耕地)が小さくても経営と販売の方法を
今までのやり方(JAに卸すだけ)にこだわらなければ
農家を続けることが出来て、しかも稼ぐことが出来る。
一見、地方に比べるとハンデが多いイメージの
あった都市農業は実はこれからの展望が明るいというわけなのだ。
また、農地を残しそれを発展させることは
地域の環境や社会性を守りはぐくむといった
「多面的機能」があり、これを伸ばして
農産物の供給を中心とした機能のみならず
都市部の防災、農作業体験による学習・交流の場の提供
さらに農業の理解の醸成によって、福祉との連携
すなわち高齢者や障がいをもつ人が生きがいをもてる
社会づくりへの貢献ができるし、
この実践がすでに行われている(日野市・石坂ファームハウスなど)と。
講演後は休憩をはさんで、増田薫松戸市議の進行で、小口さんと矢切で農業をしている
方とトークを。やはり話題になったのは都市農業は安全で質のたかい農産物を
作り、いかに中間マージンを経由せずに消費者に直接売る手段(直売所など)を
増やすことで確実に稼ぐことが出来ることと、それには農家自身の努力が欠かせない
ことと、地元自治体が政策面で「やる気」をサポートできるかという事だった。
矢切地区は東京外環自動車道千葉ルートの全通で大型物流倉庫の建設が予定されている
ことや、さらに市がここに道の駅や大規模な公園の建設計画を考えていることで
「田んぼだけでなく、畑が少なくなる。新規どころか農地を借りてやろうとしても
出来なくなるかもしれない」と農家の方からの声。
その中で市は独自の都市農業振興計画を3月に策定させたが、
「この中に(農業者の確保と育成の課題に)農業後継者の配偶者
新規就農者の育成と書かれているけど、
新しい農地をまず確保しなければ出来るわけがないんですよ。」
「新しい農地について農地中間管理機構に相談したら
松戸市以外(埼玉県など)の耕地を紹介された。
農業を続けたければ松戸から出ていけということですか。」
また法に基づき農業委員会が自治体に必ず設置されているが
「農業を知らない(経営面で)農業委員はもういらない。
地元の農産物を直接売ることがまず大切なんですよ。」
小口さんは練馬区の例をとり、積極的に農家たちが主催するマルシェなど
の支援や、また日野・小平市が地元野菜を小中学校の給食で使う施策
を進めたことなどをとりあげたが、
結論として、松戸市の農業の現状を多くの市民に知ってもらうことから
始めなければ矢切の耕地を守ることもままならないことが
重要であると。特に倉庫建設には地元の一部住民などから逆に
開発を進めてほしいと請願があったこと(議会は多数が表向きでは反対姿勢)
や市の農業関係予算は全体の0.3%に満たないことや
「市議会で農業に関する議論や質問がほとんどないことが問題だ」
など、ふつうに松戸で生きていると見えない農業の課題に
どれだけ向き合えるかが見えてこないことがもどかしい思いだ。
「矢切耕地は貴重」「まちづくり委」が答申 松戸よみうりHPより
https://www.matsudo417.com/matsuyomi/?p=2287