映画「マイ・ブラザー」を見た

きのうは映画「マイ・ブラザー」の無料上映会だった。
海兵隊に所属し妻や子供と幸せに暮らす兄サム、
刑務所に服役し、親から厄介者されている弟トミー。
サムがアフガニスタン戦線に行くところから
この映画が始まるのだが、兄弟の絆の深さが物語の導入部になる。
搭乗したヘリがゲリラのＲＰＧ爆弾の攻撃を受け墜落。
悲しい知らせがサムの妻グレースとトミーに届いた時、
その悲しさと虚脱感。それをどこにぶつけたらよいのか。
名誉の戦死と讃えられても、家族から頼りにされ、
トミーにとっては唯一の拠りどころであるサムを失ったことは
克服することのできない大きな傷になったはずだった。
しかし、トミーが酒代を払えずグレースに助けを求め、
グレースがトミーを無視しなかったところから
物語は少しづつ「救い」の方向へと変わってくる。
宿なし同然のトミーが少しづつサムの子どもたちと打ち解けていくようになり
サムのかわりに残された家族を守ろうと思いはじめる心境の変化は、
「使い勝手の悪い台所」がリフォームされていく家の中とシンクロされて
そのベースには、どんなことがあっても自分のことを兄が守ってくれたように
自分も兄が大切にした家族を守るという決意を、見る者に強く印象づけさせた。
しかしこの物語はこれで終わらせることを許さない。
墜落死していたはずのサムは生き残ったところをゲリラ軍（アルカイダと言ってもいいかも）
に捕虜にされ、彼らが妻や子供の写真を見たことで
「お前には家族がいるだろう。逢いたくはないか。」
目の前で自分と同じ人間が処刑されるのを見せられ、
ビデオカメラの前でアフガンの戦争はやめろと言えと強要される。
そして自分とともに捕虜になった部下を殺せと迫られ、
不本意な決断、そして心に負った激しい傷。
誰にも言えない懺悔、すべては「家族に再会するため」。
ゲリラ掃討で帰還を果たしたサムは家族やトミーとの再会に喜びながらも
あの時のことが心身にトラウマをきたし
セラピーを拒絶。そして自分の子どもがついた心ないウソが
「使い勝手がよくなった台所」の破壊をおこし、それだけではなく
自らも破壊しようとしたサムに、トミーは・・・・・

アフガニスタンの闘いは泥沼の一途をたどりながらも
オバマ大統領はさらに派兵を増やして後退させることをしない。
ベトナム以上の悲惨な状況の中で、多くのアメリカ兵が心身に異常をきたして
いるとの話がある。この映画（2007年以降が舞台）はこれらの問題を題材にしながらも
家族のつながり、兄弟と存在の重さを強く訴えている。
血がつながっているからというだけでは
互いを思いやることは出来ない。それぞれが創りあげてきたものを大切にして
尊重をすれば苦しいことがあっても絶望しなくてすむ。
しかし、戦争はそのような人間として生きる
大切な心を踏みにじり、多くの人々を荒廃させている。
だからこそアフガンと海兵隊をモチーフに入れたのだと思う。
悲惨と怒りを強調しなくても、反戦を訴える作品になっているのだ。

マイ・ブラザー [Blu-ray]