映画「BOX 袴田事件命とは」の高橋伴明監督を迎えて「袴田事件から裁判員制度を考える」

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以前このブログでお知らせした通り、きのうの午後
日本キリスト教婦人矯風会主催の講演会、
袴田事件から裁判員制度を考える」が東京・大久保(新宿区)の
矯風会館集会室で行われた。

http://d.hatena.ne.jp/shiraike/20100914/1284433844

映画「BOX 袴田事件 命とは」の監督をつとめた高橋伴明氏と
千葉大法科大学院教授の後藤弘子氏とのクロストーク形式で行われ、
映画を見ていない人のために「BOX」の内容に関する話や
裁判員制度や死刑の在り方、そして冤罪について
どのような考えをもっているかについての思いなどが語られた2時間だったが、

(左が高橋氏、右が後藤氏)
高橋氏も事件を初めて知ったときはまだ17歳で、
その時は新聞記事を読んで袴田氏をひどい人間だと思ったそうだ。
しかし2007年に当時の裁判官だった熊本典道氏が告白したことで
当時の事件資料を読み返すようになった。
そんなときに裁判官制度のPRビデオの制作依頼がきたが
制度のひどさを感じてその話を断った。
その後に「BOX」の企画者から話がきたことで、
裁判員制度を考えることができればと思い、監督を引き受けたとのこと。
この映画のシナリオを作る上でまずやったことは
「袴田犯人説」を理論上で検証したことだった。
しかしその検証で得られたことは
「袴田さんは無罪」であり、そこからストーリーがまとまった。
またこれまで映画を作る時はその物語の関係者に会って直接話を聞いてきたが、
「BOX」ではその仕事は共同脚本の夏井辰徳さんに任せて
客観的な目で袴田事件をまとめていくことにした。
真犯人像もそのときにまとまってきたが
そういう映画じゃないからと自分自身を抑え込んだこともあった。
こうして作られた「BOX」について、
題名は「檻=箱の中」「OとXの字をマルとバツに例え」「ボクシングでは互いが全くパンチを出さないときに
レフェリーがボックス(ファイトと同じ意味)と注意するから」の意味でつけたとのこと。
物語の構成では熊本氏と袴田さんの生い立ちからはじまり
熊本氏が袴田事件の裁判官になり死刑判決を出してその後の苦悩を中心に描かれたことについて、
「熊本さんがカミングアウトしたことが映画へのきっかけになったことから
 裁く側の視点をしっかり描くことを考えた。」
また性格面が違う熊本さんを含む3人(1人は思いこみが激しい裁判官、もう1人は事なかれ主義風の裁判長)を裁判官にしたことについて
「裁判は組織の中で決まること。その中では自分たちが正義であると信じ込んでいる
 ことの恐怖を伝えたかった。」
高橋氏は袴田事件を知ることで
「なぜ見込み捜査をして(自白もコロコロ変わっている)、証拠まで改竄してマスコミまで利用して袴田さんを犯人に仕立て上げた警察の真意は何だろうか」
と疑問を感じたという。

そこには元プロボクサーであることや地元清水出身ではないこと、また離婚をしていることから
当時の世間的な「差別感情」が捜査する側の「思いこみ」に発展し、
静岡県警の(自白を強要する捜査手法)は昭和の警察の典型」であったことも
冤罪を引き起こした要因ではないかと思ったと話した。
「人間だってまちがえることはある。しかし裁判官にも学閥がある、弁護士にしてもだらしがなくて何もできなかったのでは?」
といった問題もこの映画の中でクローズアップさせたと語り、
人を裁くにはまず教育と信仰が大切にして、そこから
相手の立場になって考えることが必要であり
今後はその方向に発展してほしいと発言した。
高橋氏も現行の裁判員制度に反対で、死刑制度においても
「法のもとで殺人をすることと同じだから、死をもって罪をつぐなえない」と思っていることから、
だからこそ「教育と信仰」に期待するしかないと意見を出した上で、
この映画は社会派ではなく反社会派映画であって、これほど自分の立場を明確に主張した作品はないから
これからはこのような場にも出て行かなければいけないなと最後に自身の主張を話してくれた。
最後の質疑応答では、約50人の参加者の中から「12人の怒れる男に並ぶ素晴らしい映画」「裁判員制度反対運動に賛同してくれた」
「多くの苦労もあったなかで完成させてくれて、私たちの力になった(救う会の門間幸枝さん)」といった評価や感想などが出てきて、高橋氏も笑顔と感謝のことばを何度も
繰り返していた。映画を見た私も生の話や思いを聞けたことは嬉しいし
第2次再審請求中の袴田さんを救う活動がより多くの人々に知ってもらいたい
と改めて思った。
高橋監督、ありがとうございました。
高橋伴明監督のインタビュー記事

http://eigageijutsu.com/article/150886773.html
後藤弘子氏については下記ホームページを参照しました。
http://www.lawschool.chiba-u.jp/profile/P32.html
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