うずみ火ジャーナリスト入門講座を終えて(2)

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11月1日深夜に放送された「NNNドキュメント‘10・臓器提供―家族が決断するとき―」を見た。
2日目の講師の1人である読売テレビ(YTV)の堀川雅子さんが制作に携わった番組だ。

1人の移植コーディネーターの仕事を追う取材レポートを軸に、
法改正で可能になった15歳以下の脳死移植についても、
ドナー提供をした子どもの母親に話を聴くなど、
脳死移植の現場において一番必要としていることは何かを問いただした内容だった。

この番組でクローズアップさせたのは「臓器を提供する遺族の側」の思いだった。
例えば本人が生前に脳死による自分の臓器提供に「イエス」と意思表示しても、
遺族からすれば本人がそのようなことを言っていたことを知らないこともあるし、
残された者の気持ちからして、とても移植のことを考えることはできないと言ったこともあるだろう。
コーディネーターがどんなに奮闘しても移植に至らないケースもあったはずで
子ども(番組では生後9か月)の場合だとなおさら大変なことが多いと思う。
しかし、臓器移植を「提供する側」の視点から取り上げるこの番組が放送されなければ
自分たちが当事者にならない限り、現場の苦悩と本当の課題が見えることや考えることは出来ないだろうとも感じた。
堀川さんは「取材するときは相手の心を開かせるために自分をさらけだすことがあるが、
編集作業をするときは客観的・観察者の視点でやっている。」と話してくれたが、
脳死による移植は現在でも世論を2分する大きなテーマであり、
日本の社会構造ではなじまないという意見も多い。
しかし移植医療は日本はトップクラスであり、
海外の移植は受け入れてくれた国がドナーの優先権をめぐって、
以前のようにはいかないといったことが臓器移植法の改正につながっている。
しかしこれで全ての問題をクリアしたとはいえないのだ。
移植の現場では医療と死者の尊厳と、そしてコーディネーターの存在が
どれだけ重要であるかはほとんどの人は「知らない」のではないか?
だからこの番組では、臓器移植に本当の理解をして欲しいという思いにこだわって
現場を可能な限り取材をした。そしてあくまでも衝撃的な映像効果に頼らずに取材相手の「生の声」を伝えることにこだわった。
そのメッセージは「賛成」「反対」以上に
脳死移植で本当に議論してほしいこと」とは何かということを堀川さんたちが訴えていることがよくわかった。
決して普通のニュース番組のように、何か問題があると困ったふりをするのではなく、
当事者の思いを自分たちの思いにシンクロさせなければ
ドキュメンタリ―を作る意味がない。作り手の本音はここにあるのではないか。
それがわかったことで講座を聴いたことが大きな収穫になったし、それを記憶の中に入れて
ドキュメンタリーを見ると、この番組に作り手たちは
どんなメッセージを送ろうとしているのかを深く考えることで
これからの自分と社会の流れが少しずつみえてくるかもしれない。
ジャーナリズムにおける「批判精神」の意味がわかったような気がした。
(今度は12月に子どもの目から見たDVをテーマに堀川さん制作の番組が放送される予定だそうです。
 また今夜も中京テレビ制作で「臓器提供」の第2弾が放送されます。)
http://www.ntv.co.jp/document/
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