うずみ火ジャーナリスト入門講座・第3日目

人気ブログランキングへ
23日にキャンパスポート大阪で行われた新聞うずみ火主催のジャーナリスト入門講座は、
フリージャーナリストでうずみ火のスタッフでもある西谷文和氏が
途中休憩をはさみながら約3時間、最新の取材写真を紹介しながら
講義をおこなった。

(写真は8月の黒田清さんを偲ぶ集いで撮ったもの)
前半は10月の取材での写真を交えながら最新のアフガニスタン情勢を紹介した。
アメリカのオバマ政権が、イラクからアフガニスタンへ戦略をシフトしているのは
ニュースでも伝えられたが、空爆は激しくなり泥沼の状況を増している。
アフガニスタンの警察官はISAF(イタリア)軍にテロ対策の訓練をしている写真。
警察官いえども、機関銃からロケット砲まで実に軍隊と同じような射撃訓練をやっているが
彼らの中には夜になるとゲリラ活動をしているのもいて、訓練をした警察官に殺される
かもしれないという恐怖もISAF軍にはあるという。
カブールの子ども病院では、やけどや劣化ウラン弾による先天性の奇形(肛門がない、腸が体から出ている、足を地につけることができないなど)
によって入院治療をする子どもたちが多い。
やけどが多いのにはこんな理由がある。
貧困のなかで難民キャンプに住む家族は、地べたで火を起こして煮焚きをするが
子どもが狭い家(といってもテント)で動きまわると火に触れたり、お湯をかぶったりすることがあるからだという。
奇形の子どもたちの中には、背中にこぶし大の腫瘍を患った子もいて、6月に取材した時は、
今度行く時はもう死んでいるのではないかと思った。
しかし今回行ったときは切除手術を受けて生き続けている。
ほんとうは生後6カ月に手術しないと死んでしまうのだと医師の話。
この医師は日本でさらに技術を学びたいと西谷さんに話していて、
どうにか日本に呼び寄せることができないかと私たちに思いを打ち明けた。
このあと、テレ朝の「報道ステーション」(6月)とTBSの「総力報道theNews」で放送された
取材映像を紹介しながら、空爆で荒廃するカブール、カンダハルでの取材(子ども病院もここで)、
そして難民キャンプなどの状況を話した。
映像では空爆で両足を失い、その後結婚して娘を産んだが
その夫も2年前に失ったことから生活に困窮している女性の姿があった。
買い物に行く時は娘が手こぎの車椅子を押すのだが、
15年前のもので恵んでもらったもののため、動かすのも大変だがこれに替えられるものがない。
「娘のサハルちゃんは将来医者になりたいと話してくれましたが、
 いまの生活ではまず無理な状況です。」(学生からの質疑応答で)
そのほか、アフガンではイスラムシーア派)社会の影響で女性の立場が低く、
ブルカを着けて顔を隠し、物乞いをする風景の写真もあった。


後半は「なぜ、アフガニスタンの戦いは終わらないのか?」をテーマに
戦争のメカニズムを考える講義が展開された。
ブッシュ(パパも2世も)政権を支えていたのは、
軍需産業と彼らを投機対象にする金融企業グループ(カーライルなど)であることは
よく知られているが、じつはオバマ大統領も
軍産学複合体から多額の政治献金を受けていて、
まさに共和党(=ブッシュ)も民主党も「似た者同士」になってしまったということだ。
献金第1位のカリフォルニア大学は軍事関係の研究に強い。
第2位のゴールドマンサックスは軍事産業への投機をさかんに進めている。
そして第3位のAIGは戦争保険を扱っていて、リーマンブラザーズのように
つぶすわけにもいかなかったことから政府がサブプライムローン破綻のときに政府が支援をすることで「持ちつ持たれつ」の関係になったという。

軍事費はこれからも自分を支持する団体などを支えるために増え続けている。
とても公約を達成するための財源(社会保障費)と両立することはできない。
そうなれば国債を発行し続けなければいけない。
それを引き受けるためにドルも刷られ続ける。
あふれたドルは行き先を失い、投機マネーとして流れ株安などを招き、
サブプライムローンの対象となった「不動産」の価値をも下げる結果になったわけだ。
まさに「テロとの戦い」の大義名分で戦争を続けなければ、アメリカは世界の盟主から
転落を余儀なくされるわけだが、そのために危惧されるのは
「戦争の無人化」と「核拡散」だという。
アメリカは無人爆撃機無人戦車の開発をすすめていて日本も買うとのこと。
イラクやアフガンで多数の死者が出ていてこれ以上その数を増やさないためにも
この兵器の開発をというのが理由だそうだが、
タリバンだと思って罪のない子どもを、ラスベガスの操縦施設から無人爆撃機誤爆した軍人が、
帰宅したころには妻と子供にやさしい夫に戻る。はたして彼にその子どもの親の
気持ちを理解することが出来るでしょうか?」
有人の爆撃機でも誤爆が多いのだから、無人化されればさらに誤爆で被害を負う人(特に子ども)が
多くなるのではと西谷さんは話した。
またマイクロソフトオバマ陣営の献金4位に入っているが、
創業者のビル・ゲイツ原発マネーを狙っていて、
東芝などと手を組んでいるという。
いま電力会社が盛んに宣伝しているプルマーサルも
核兵器の燃料棒とウラン燃料(原発で使用済みの)などの複合によってプルトニウムが作ることができることから、
「プルマーサル=核兵器の更なる増強」にも結び付くと指摘した。
最後に湾岸戦争の米メディアの報道を例に取り、「戦争はいまPR会社の力で真実がでっちあげられ進められている。」と語り、
「戦争はPR会社の力で止めることが出来る。」と話し、
イラクの戦闘終了宣言をしてから「情報戦略に誤りがあった。」といっても遅いとアメリカを批判した。
またジャーナリストを志す学生たちに、
地方公務員時代にカンボジアを初めて訪れ、海外への関心を深めたことから
NHKのラジオ講座で英会話を学び、その後も中近東アフリカへの旅を続けるうちに
フリージャーナリストの道(長い有給休暇をそんなに取れない)を歩むことを決めたエピソードを話してくれた。
「フリーは自己責任です。取材に行く時は外務省や大阪府警にしょっちゅう話を聞かれる時はありますし、
 現地の大使館などから何度も止められたことがあります。
 カンダハルではタリバンにカメラを奪われないように隠し撮りをやっても、
 現地の警察に取り調べを受けたりしたこともありました。
 また、フリージャーナリストはなろうと思えばいつでもなれるけど、アルバイトなどで生計を立てる人もいっぱいいます。
 それでもイラクアフガンに関心を持っている人がいれば、知り合いの通訳を紹介しますよ。」
現地の記者会見に参加した時は、会見先に「自分は日本の平和を考える新聞記者」であるので取材させてほしいと
手紙を書き、現地の業者にプレスパス(支給されるのではない)を作ってもらい、これを首から下げて
会見場に行ったが、携帯電話などの金属類はすべて預けられるとのこと。
だから「靴しか投げられるものはない」というわけだ。
西谷さん曰く「アフガンでさえもこうなんですから、日本のあの記者クラブ制度はもうなくなってほしいですね。」
(追記)
アフガンには約10名くらいの日本人ジャーナリストが取材活動をしてるが、
西谷さんは渡部陽一さんと会う機会はこれまでなかったそうです。
西谷さんの「イラクの子どもを救う会」ブログ
http://www.nowiraq.com/blog/
 人気ブログランキングへ