続・毒入りギョーザ事件容疑者確保に思う

今日発売の「週刊文春」と「週刊新潮」を読み、改めてこの事件が急転直下で容疑者確保されたことに疑念を感じている。
呂月庭容疑者は臨時工だったが、工場内の食堂の管理をしていた。
決してギョーザの生産ラインの担当ではない。しかも食堂と生産ラインは別の建物で、
個人のID番号や鍵もあり、監視カメラもある。
何らかの方法で休日や夜間に忍び込めても冷凍庫に必ず鍵がかけてあるから製品に触れるのは難しいと
「新潮」で中京学院大学の久野輝夫助教授の証言があった。
私の元・職場はさすがにID番号はなかったが、外部の侵入者を防止するために入口のドアにはダイヤルキー(暗証番号を押して鍵を開ける)
をつけていたし、食堂関係者は外部に委託をしていたが生産ラインに侵入すれば周囲が制服の違いなどですぐにわかる環境だった。
また久野氏は生活に困っていて容易に生産ラインに忍び込めることが出来たのならば
どうしてギョーザを盗んだり、工場のガラスを割ったり車を壊したりしなかったのだろうかと指摘しているが
まさにその通りだ。
実は私も元・職場でも製品にならなかった原料の場内販売に飽き足らなくなった一部のパート職員が
陰で製品にする前の原料をパックして盗んだという話を聞かされたこともあったし、場内販売で買って休憩室にある冷蔵庫においたものがなくなったことがあり
急きょその冷蔵庫前にも監視カメラが設置されたことがあった。知らないうちに壁に穴が開いていたこともあった。
発覚した時は即クビになったのは言うまでもない。
しかし、あくまでもこの工場全体を窮地に追い込もうとしたのではなく、個人的な理由によるものであったということを私は知っている。
呂容疑者が下水にすてた注射器から水溶性のメタミドホスが検出されたことの不可解ぶりに加え、
メタミドホスは工場内のネズミ駆除に使っていたのを盗んだというのは
もはや食品工場の体をなしていないのを暴露したようなものだし、「天洋食品」も同罪ということになる。
元・職場では外部の消毒会社に委託して粘着式のネズミ捕りシートを敷き
殺虫剤にしても有機リン系など人体に影響のあるものを使わないことにしている。今もそうなっているはずだ。
まさか呂容疑者は大きな目的(労使関係の悪化などで内部告発?)をもってこの事件を仕掛けたわけではないだろう。
「文春」の記事では、事件発生後の1か月後の中国内の人気サイトで
「こんなに捜査が厳しいなら、もう最後は臨時工がやったっていうしかない!」という同工場の従業員らしい書き込みが、いま再び静かな話題を呼んでいるとのことだが、
今にして思えばこれこそが「真実」を突いているのではないか。この事件が単独犯ならばもっと早い時期に解決できたはずだと思う。
日本側は再び捜査当局を現地に送り込んで徹底的に真相を明らかにすべきだ。
中国当局に遠慮することはないのである。