チリ銀

チリ地震の被害は、国内各方面で大きな影響が出る恐れがあると、連日マスコミが伝えているが、今日の「日刊スポーツ」の社会面に「シャケ弁消える」の大見出しが出ていたのでよく読んでみたらチリ国内の養殖銀ザケの関係施設がすべて被災にあい、日本への輸出がストップしてスーパーなどで売られる銀鮭やシャケ弁を売る弁当屋に影響が出るということだった。私はこの記事を読んで異動前の職場のことを思い出した。食品工場の生産管理の仕事をしていた私は、そこで主に扱っていた製品がスーパーでよく見られる「魚のパック品」だったことから、ほとんど「パックにされる前の鮭」にふりまわされる毎日を過ごしていた。「店舗」と「共同購入」に卸される鮭製品はまず、「紅鮭」と「銀鮭」と「トラウトサーモン」の3種類に大別される。そのうちの「トラウトサーモン」は名前からして鮭と思われがちだが日本名は「マスノスケ」とよばれマスの1種なのだが、非常にあぶらがのって風味が良いことからずいぶん出回るようになったのだ。「銀鮭」に話を戻すと銀鮭は「三陸産」と「チリ産」に分かれ、塩味のつけ具合によって「甘銀」と「中辛銀」と「辛銀」に分かれるわけだが、私が就職してこの工場に配属されたときに、原料の検収と生産工程へのセットスタンバイ作業の仕事が担当で、このチリ銀にはずいぶん苦労し泣かされていたことがあった。冷凍で入荷されるチリ銀は、頭を落とした丸ごと1尾(ドレス)の形で、しかも1箱10尾の形で入ってくるために、いつも20キロ以上の箱を台車に積み上げ(2箱ずつ交互に、10箱まで)て冷凍庫から作業室まで運び出し、その箱のひもをカッターで切って開けて、1尾ごとに包まれたビニール袋を全部取る作業をしていたのだ。これをやらないと1尾を半身にするための2枚おろし作業ができないし、さらにそれを切り身にするための機械切り作業や一旦解凍した切り身を再凍結する作業やパック作業にも影響するのだ。チリ銀はヒレがねじまがっていてよくビニールに引っかかっていたため(しかも重い)、作業は大変だった。しかも早朝の検収とセットスタンバイが終わって朝食休憩があるとはいえ1日に20ケース以上、多いときは100ケースも指示されることもあり残業しながら作業していたことも多かった。もっともこの作業はチリ銀から三陸銀もしくはトラウトサーモンへとその種類が変わっていった。チリ銀は安いがあぶらののりが悪く不評だからとバイヤーが話していたことを思い出す。チリ銀はこれからどうなるのだろうか。本当に姿を消すことになるだろうか。